column 2020.3.13
 
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福岡県公共不動産活用推進プロジェクトレポートvol.1「大野城市編」

長谷川 繁(福岡R不動産/DMX)
 

いま、日本全国では、使われなくなった学校、公民館、庁舎、公園、土地などなど、自治体が所有して活用に困っている公共不動産がどんどん増加していっています。
R不動産のグループサイト「公共R不動産」では、その活用に少しでもつなげていければと各自治体が所有する公共不動産物件情報を掲載したり、活用方法を知ってもらうための読み物などを連載したりしています。

そして今回、福岡県×公共R不動産+福岡R不動産で福岡県内の公共不動産の活用を推進するプロジェクトが進行中!ということで、自治体も公共不動産の民間活用に前向きな動きが出てきていたり、自治体ならではの物件情報が出てきたりと、その機運が高まってきています。そこで、福岡県内の公共不動産にまつわる動きをより多くの人にも知っていただくために、いくつかの自治体の方々にインタビューをさせていただけることに。

(「公共R不動産」HP)

その第1弾としてご登場いただくのが「大野城市」。企画政策部自治戦略課の古賀さん、花田さんにお話を伺いました。

(大野城市役所の古賀さん(右)、花田さん(左))

「今日はありがとうございます。まず、大野城市の特徴やPRポイントはどんなところでしょうか?」

交通利便性が高く住みやすい環境というのが、まず挙げられるところだと思います。
大野城市内には九州の交通動脈である国道3号、JR九州鹿児島本線、西鉄天神大牟田線が南北に貫通するとともに、九州自動車道の太宰府IC、福岡都市高速や福岡空港にも近接していて、福岡都市圏で最も交通の便に恵まれた地域です。

それでいて、いこいの森中央公園やキャンプ場などの子どもの遊び場も多く、子育て世代の方達にも人気で人口は今なお増加傾向です。人口の自然増加数(率)も県内で有数の高さなんですよ。
(※人口の自然増加数:出生数と死亡数の差によって生じる人口の増加。人口減少が著しいエリアほど自然増加数が低かったりマイナス傾向にある。)

歴史資源にも恵まれたまちで、市名にもなっている「大野城」、これはわが国最古の朝鮮式山城に由来しています。あと行政としても地区コミュニティを大切にしていて、市民主体のまちづくりを継続的に進めています。

(大野城市街地はロードサイド店舗も多く生活利便性が高いです)

(子連れにもおすすめな大野城いこいの森中央公園)

「今回は、地域のためにこれから積極的に活用に向けて検討していきたい場所ということで、JR大野城駅前の市有地をご案内いただきました。まさに駅前!な好立地ですね。」

そうなんです。まさに駅前という好立地。路線バスやコミュニティバスも停車しますし、タクシー乗り場や駐輪場も整備されていて結節性が高くアクセスのしやすさも抜群です。

周辺には、九州大学の筑紫キャンパス、県立春日高等学校、5つの市立小中学校もあるような文教色の強いエリアです。JRの駅前ですが、この辺りは西鉄白木原駅も徒歩圏内でダブルアクセスで人気のエリアなので民間のマンションも増えましたね。大野城駅の利用者数も増加傾向にあるようです。あとはこの地域の住民の憩いの場である県営の春日公園も歩いていける距離にあります。

(今回、ご案内していただいたJR大野城駅西口前の市有地。左には線路、奥に見える建物が駅舎)

(敷地はまさに駅のロータリーに接続しています)

(近隣には九州大学の筑紫キャンパス、駅で外国人の方をよく見かけるなと思っていたら、留学生が多いそう)

「周辺環境も含めて、いろいろな可能性を感じてきました。この場所についてはどのような利活用をお考えでしょうか?」

周辺環境を簡単にご説明しましたが、この場所は近隣の九州大学やその他各種学校に通う学生、地域住民、駅の利用者など、多様な人々が行き交う立地ですから、そんな方々が立ち寄り、交流が生まれ、地域のにぎわいにつながる拠点にできたらと思っています。
例えば、起業できる環境の提供やカフェが併設された施設を整備するなどして、「学生」「企業」「留学生」「子育て層」など様々なカテゴリーの人達のつながりにより、まちの新たなにぎわい創出に繋げていけないかと考えています。

あと、今回の福岡県の公共不動産活用推進プロジェクトのセミナーで話を伺った中で、未利用地について「一度、理想の風景を出現させる」というお言葉は印象的でした。今後活用を検討していく中で、土地の暫定利用や、イベント等を実施してみて、まずは利用者ニーズを可視化する取り組みも考えていきたいと思っています。

行政としても、少子高齢化の進展に伴って財政状況が厳しさを増す一方で、インフラの老朽化対策など、公共不動産の整備や維持更新を的確に進めていくことが求められています。こうした状況において、今後ますます民間の経営能力・技術力を最大限活用する官民連携による取り組みが大事になってくると思っています。既存のやり方だけにとらわれず、企業や民間事業者の方のアイディア、ノウハウを積極的に活用させていただくことで、さらに住みよく、魅力溢れた大野城市を創っていきたいです。

(敷地内には雰囲気のいい樹木。理想の風景をつくりだすのに一役買ってくれるかも?!)

「この場所をきっかけに市有地の有効活用やより良いまちづくりの機運が高まっていくといいですね。」

大野城市では、長年にわたりコミュニティと行政が一体となって「共働のまちづくり」を進めています。市民の皆さんと手を取り合いながら、地域のためになるような取り組みを進めていきたいですね。

実は私たちは、生まれも育ちも大野城市なんですけど、大野城は本当に住みやすい場所だなと感じています。一方で、福岡市のベットタウンというイメージはあるものの、福岡都市圏においても、大野城のことをあまり詳しく知らないと言う方が結構いらっしゃるのも事実です。「選ばれるまち」であり続けるために、多くの方に「知ってもらい」「来てもらえる」ような、魅力ある「大野城ブランド」を確立して、市内外に発信していきたいと思います。

あとはやっぱり「地元愛」に溢れた人が多いところも大野城の魅力のひとつです。大野城を想う人達、まちづくりに情熱を持った方々が多いということも、地域とともに活用方法や場の在り方を考えていく上でとても助けになると思いますし、そういった点もアピールしていきたいです。

(誠実に、そしてフランクにいろいろなお話をしていただきました。個人的にもめちゃくちゃ大野城市に興味が湧いてきた!)

お話を伺った約1時間、地域のことを語るおふたりの眼差しには、全国の自治体が直面している少子高齢化や様々な地域課題に向き合い、行政として未来に目を向けて前に進もうとする意志を感じることができ、私にとっても自治体職員の方の生の声を聞ける有意義な時間となりました。

福岡県公共不動産活用推進プロジェクトでは、福岡県街なか遊休公共不動産の情報公開として福岡県内自治体が活用を希望する公共不動産情報をデータベース化して福岡県HP内に公開中です。福岡県内の公共不動産にご興味のある民間企業や事業者の方々などは是非データベースをご活用ください。

なお、今回ご紹介した大野城市の活用検討地、その他お問い合わせについては、下記メールアドレスにご連絡ください。

お問い合わせ:info@dmx-j.com (担当:長谷川)
福岡県公共不動産活用推進プロジェクトの詳細はこちら

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