2018.3.23 |
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広川町 地域おこし協力隊のみなさん
可能性の種をさがして
こちらのコラムで紹介した、ものづくりにフォーカスした移住への取組を行っている広川町。
今回はその中心となるプロジェクト「ひろかわ新編集」メンバーとして日々活動されている、地域おこし協力隊の皆さんに、そのきっかけや現在の生活などリアルな声をお聞きしました。
お話を聞かせてくださったのは、(左から)山本千聖さん、山本誠さん、星野夏来さん、彌永裕子さんの4人。
全国的にも珍しい「ものづくりのスキルや経験を持つ人」という条件で広川町に集まった皆さん。
そんな視点から眺めると、この小さな町にびっくりするほどたくさんの可能性が見えてきます。
お話をうかがっている私もいつのまにか、みなさんと一緒にそのキラキラの原石を発掘しているかのように、わくわくした気分になってきました。
「ものづくり」を共通項に集まった広川町地域おこし協力隊のみなさん
――地域おこし協力隊として広川町にいらしたきっかけを教えてください。
彌永:(福岡市の)九州産業大学で染織を学んだあと、ファッションや、テキスタイルを軸に制作活動をしていたのですが、人の集まる場所や、制作スペースを作りたいなと思い出身地である筑後地方に帰ろうと思ったのがきっかけです。広川町がものづくりスペースを作る取り組みを始めるということで、地域を知り、つながりを作ることができるのでぴったりだなと思いました。
山本(千):わたしは東京でファッションデザインの勉強をしていたんですが、ファッションに関わるうちに、素材から責任を持てるものづくりがしたいと思いはじめたんです。でも、東京にいると素材の生産の現場を見ることはほとんどないんですよね。これは生活から替えていかないといけないのかな、と思っていた矢先に、知人に広川町の地域おこし協力隊を紹介されたんです。そして神奈川から広川に移住しました。
様々な地域から集まった4人、きっかけもそれぞれです
山本(誠):前職は京都でジュエリーの制作や販売を行なっていましたが、起業や生活環境を変えたいと思いがきっかけでもあります。妻と子供がいるので家族で過ごす毎日を考えると自然豊かな場所がいいな、と。そういった場所へ移住する方法の一つとして、地域おこし協力隊にたどり着きました。その中でも、ものづくりの経験を求めていた広川町は魅力的でした。
星野:私は東京の移住相談窓口で地域おこし協力隊という仕事を知りました。はじめは広川町のことさえ知らなかったんですが、ものづくりのスキルがある人を募集しているということで応募したんです。ものづくりに関することが主な業務になる地域おこし協力隊の募集は本当にほとんどないんですよね。農業などはよくあるんですけど。
拠点施設「Kibiru」にはものづくりのしやすい環境が整えられています
筑後地方が地元の彌永さん以外は、やはり、地域おこし協力隊の募集に出会うまでは、地縁もなければ広川町の存在は知らなかったということ。それだけ「ものづくり」をテーマにした協力隊員の募集は珍しいんですね、さらに実際に足を運んでみると、豊かな自然や伝統産業など広川町の中にはなんだかこの町いいかも!と思える魅力があったようです。
――日々の暮らしは変わりましたか?
彌永:ここに来てからはじめて地域の出ごとなどに参加しました。隣組単位で草むしりなどがあると、だんだん近所の人と顔なじみになっていくのが面白いんですよ。フルーツ好きとしては、季節ごとの旬のフルーツが日常的に食べられるのはとてもうれしいですね。
星野:生活の便利さという意味では、本当に以前とあまり変わらないなと感じます。スーパーやドラッグストアも自転車があれば行ける距離にそろっているし。
地域のつながりと生活の利便性のバランスは良好
山本(誠):私は家族で過ごしているんですが、隣近所との距離感が近くなりましたね。子供のことも、さりげなく地域で見守ってくださっているな、と感じます。出張なんかで家を空けるとき、やっぱり安心感が違いますよ。距離が近いのは役場の方もそうで、仕事だけのお付き合いではなくて、生活まるごとの関わりといった温かみを感じることが多いです。
一方利便性という意味では、福岡市との距離が近いというのは嬉しいですね。実家が神奈川にあるんですが、福岡空港へのアクセスが良いので行き来も負担にならないのはとても居心地がいいです。
山本(千):近隣との距離の近さはアパートに住んでいても感じます。ちょっとしたことで声をかけてもらえたり。最近は、隣の犬に挨拶をしてから出勤するのが日課になりました。あと、なぜかみなさん気持ちに余裕があるように感じるんですよ。どこかほんわかしていると言うか。不思議ですよね。
――実際に広川町に来られて、地域おこし協力隊としてはどのような活動をされているんですか?
彌永:来た当初はまず地域を知ることからでしたね。自転車で、広川町にある全部の絣の織元さんを回ったり。地元のおばちゃんに、農家さんを紹介してもらったり。だんだん顔がわかる関係や、知り合いが増えていくことで、広川町にいろんな人や、素材、いいものがたくさんあることがわかってきました。
山本(誠):「Kibiru」のリノベーションに関わることや、「HIROKAWA CREATORS HUB」の企画などの仕事はもちろんあったんですが、決まっている仕事があるというよりも、自分たちで提案しながら形にしていくことの方が多いですね。仕事外でも山あいの上広川地区で畑を借りたり、大きな空家をまるごとお借りして何かできないか検討したり、色々と試行錯誤しています。
公民館をリノベーションして作られた「Kibiru」
山本(千):今年は綿花の栽培をやってみました。絣の原料になる綿花を自分たちの手で育ててみたかったんですが、なかなか花がうまく開かなかったりして、今年はてのひら1杯分くらいしかとれませんでした。来年はもっと収量をあげられるように工夫して、取れた綿花を使ってなにか作ってみたいなと思っています。
星野:ひろかわ新編集の仕事は自分で決めて提案もできるので、勤務時間は増えたんですが、不思議と手持ちの時間には逆に余裕ができた感じがするんですよ。
伝統産業である久留米絣の織元さんを訪ねることも
みなさんが実際に地域で暮らしながら、ひとつひとつ発見してきた種がだんだんと芽吹き始めています。
これまでの思い込みにとらわれず、新しい視点で地域を見てきたからこそ、再発見できたことがたくさんあるように感じました。
――上広川地区のお話が出ましたが、みなさんから見て上広川地区はどんな印象ですか?
山本(誠):今は比較的役場に近い中広川地区に家を借りて住んでいるんですが、将来的には家族で上広川地区に住みたいと思っているんです。自分だけではなく、広川町外から訪れた人や移住した人には、上広川地区が人気ですよね。山に囲われた感じや、段々畑の風景がおおっ!となるんですよ。水も井戸水で、綺麗で美味しいですしね。
急斜面から絶景を見下ろす上広川地区
星野:上広川地区は、広川町の中心から車で10〜20分なのにあの山深い感じになるのが面白いですよね。役場の周りはそれこそ東京にいた頃とおなじような生活ができるくらい便利なのに。でもあの感じが醍醐味だと思います。せっかく広川町まで来たら、ぜひ山あいの地区まで行ってほしいです。
山本(誠):上広川小学校も私たちから見ると魅力的ですね。素朴でのびのびした校風で、なんとなく、大人と子どもの距離も近い感じがするんですよ。
自然農法を実践中の「KOJIO畑」は緑に埋もれています
彌永:上広川の小椎尾地区に借りた畑「KOJIO畑」では、いま自然農法を試しているんです。自分たちで食べる野菜を育てようと実験中です。畑仕事に疲れたら、水分補給がわりに、もともと植えてあったミカンの実をもいで食べたり(笑)茶畑も見える見晴らしのいい気持ちのいい畑です。自然豊かな上広川地区は可能性のかたまりだと思います。
山本(千):実は私も、作った洋服を上広川地区で販売するお店をやってみたいなと思っています。山あいの地域だからこそ、どんな方が来られるのか興味があるんです。そんなところまで来てくださる方との出会いはとても貴重なものになるんじゃないかと思っています。
――個人的にこれからやってみられたいことはありますか?
彌永:広川の素材を使って、少しずつ糸を染めているので、それで生地を作って服や空間などを作ってみたいと思っています。農業も盛んな土地なので、素材がたくさんあります。剪定した枝や、果実、山にある実で染めたり。せっかく絣の産地にいるので、この土地の技術でテキスタイルの制作もやってみたいです。
久留米絣の技術を次世代につなぐことも大切です
山本(誠):新しいことにも挑戦したいですね。以前の仕事のスキルを活かすのもいいですが、「以前からやりたかったけど時間がなくてできなかったこと」を今は優先して取り組んでいます。直焙煎したコーヒー豆をネルドリップで丁寧に淹れてみたり、天然の桜の木で燻したベーコンを一から作ってみたり。
山本(千):先ほど言ったお店を今年中にオープンさせることです。広川町のゆとりのある生活環境の中だからできる制作・活動ができそうだと思っています。
伝統の中に新しい発見の種を探す日々
星野:4月には新しい施設「Orige」がオープンして、マルシェやワーキングステイなど色々な企画が動き出すと思います。個人として、と言うより協力隊としての方がずっと忙しくなりそうですね(笑)
――最後に、広川町の将来についてお聞かせ下さい
彌永:今「HIROKAWA CREATORS HUB」で滞在されている日野さんは、ご自身のブランドの起ち上げと、2月のファッションショーの準備をされています。こんな風に、新しいものがもっと生まれていく場所になってくれたらいいですね。ファッション以外にも、本屋さんやカフェなどの小さくて素敵なお店を開くような方々が集まる場所になるといいなと思います。そんな素敵な小商いがきちんとやっていけるような、適度に自由で楽しいムードがある地域になれば。
地域を訪れた人も地元の人も、ゆるやかに集う場が生まれています
山本(誠):八女、久留米、うきはなど存在感のある周辺地域の中で埋もれてしまいそうになっているけど「なにもなくてもいいところ」として、都市部から遊びに来た人たちがゆっくりして癒されて帰るような場所になれたらいいですよね。「なぜだかわからないけど面白い人はいっぱいいるよね」みたいな場所になるのが理想です。
山本(千):遠いところでも、山の中でも、本当に面白い場所さえあれば来てくださる方はいると思うので、わたしが構想しているお店も、新しくオープンする「Orige」も含めて、そんな面白い点をたくさん作っていきたいと思います。ゆくゆくは周りの地域とも協力して、筑後地域全体を盛り上げていけるといいですね。
星野:今は「HIROKAWA CREATORS HUB」やフルーツ発酵イベントなどにぎやかな動きがいくつもあるんですが、それをゆっくりとでも継続していくことがいちばん大事だと思います。この先、わたしたち地域おこし協力隊の任期が終わっても、新しい協力隊や地域の方、移住された方がその盛り上がりを引き継いで続けていただけたらなあ、と思っています。
――ありがとうございました。
みなさんの表情を見ながらお話をうかがっていると、広川町に眠っているたくさんの可能性が、今、少しずつ動き出そうとしていることを実感できます。
4月の「Orige」のオープン後は、さらに活発な動きが起きそうで、楽しみなところ。気になった方は是非、広川町に実際に足を運んで4人に会ってみて欲しい!そう思います。
(Origeについてはオープン後、レポート記事を公開予定です!)
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