ローカルガイド壱岐編、第3回の今回は僕が知らなかった壱岐の一面に注目。
6カ月通う中で見えてきた新たな壱岐の魅力。その中でも、記憶が新鮮なうちにどうしてもみなさんと共有しておきたい、そんな特別なスポットを選びました。
早朝の光の中で見る小島神社は幻想的でした。
壱岐と言えば、美しい海と砂浜、それから新鮮な海の幸と壱岐牛。そんなイメージしかなかった僕ですが、今行っているプロジェクトで壱岐に通ううち、そのイメージがどれだけ浅かったか思い知ることになりました。今回は、6カ月通い続けてわかった、壱岐の新たな魅力をご紹介していきます。
海の上の参道を渡って「小島神社」へ
まずご紹介したいのは、壱岐のパワースポット、芦辺の小島神社。島全体が神域になっているこの神社、なんと干潮時にしか渡ることができない特別な場所なんです。
朝焼けの中、干潮とともに参道が現れました。
時期によっては朝日も望める小島神社。しん、と静謐な空気の中、海から現れた参道をゆっくりたどっていくと、それだけで心が洗われていくような不思議な気分になります。もし通りすがりに参道が姿を見せていたら、運命的な何かを感じてしまいそう。
もちろん、実際に行かれる際は、潮の満ち引きをきちんと調べておかれることをおすすめします。
壱岐には地域に根づいた大小さまざまの神社が。
実は、壱岐は全国でも有数の神社スポット。小さなものも合わせれば、その数は1000にも上ると言われています。小島神社以外にも、200体以上の石猿像に出会える男岳神社や、神道発祥の地という説もある月讀神社、ゼロ磁場がある女岳神社など、興味深い神社がたくさん。
ちょっと視点を変えて、壱岐の神様たちを訪ね歩くのも楽しそうです。
サンセットビーチ「里浜海水浴場」からカヤックで漕ぎ出そう
どこまでも漕いでいけそうな気分になってしまいます。
里浜海水浴場は、遠浅で透明度が高い海水浴スポット。
でも、この海の楽しみ方は海水浴だけじゃないんです。壱岐の海を知り尽くした地元の方々に、海をもっと楽しむためのアクティビティーとしてカヤックを教えてもらいました。
カヤックは軽くて小さなカヌーの一種。かわいらしいルックスながら、海峡を渡ることもできるパワフルな船です。小さい船ですが安定していて、漕ぎ出すまでは簡単。慣れないうちは力が入りすぎて疲れてしまいますが、コツをつかめば長距離もすぐに漕げるように。パドル一本でどこまでも行けそうな感覚がやみつきになります。
金色の波が打ち寄せる夕暮れ時のビーチ。
この里浜海水浴場は入江になっているので、風の強い日でもこの場所は波が静か。安心してカヤックが楽しめる環境になっているんです。しかも嬉しいことに、ここは夕日の美しいスポット。日暮れ時に漕ぎ出せば、一面が金色に染まる幻想的な風景に出会えます。
壱岐でカヤックをおすすめするのは、ただ楽しいから、以外にも大きな理由があるんです。
それは「カヤックでしかたどり着けない景色がある」ということ。
夕暮れの波間はもちろん、海上から眺める島のシルエットや、明かりのない海から見上げる降るような星空。海に向かって開いた洞窟や、陸からはアクセスできない秘密の砂浜。陸からだけでは味わい尽くせない魅力が、壱岐の海にはたくさん眠っているんです。カヤックにクーラーボックスを積んで釣りに出たり、小さなコンロを載せて無人島でコーヒーなんていうのも、想像するだけでワクワクしますね。
今回壱岐を訪ねたときは、島の知人にカヤックを貸してもらいましたが、自然体験施設「壱岐出会いの村」ではカヤック体験ツアーに参加したり、小島神社近くの青島公園から漕ぎ出す一支国シーカヤック(原の辻ガイダンス)でも体験できます。一味違った海の魅力をカヤックで掘り起こしてみるのはいかがでしょう。
無人島「辰ノ島」でトレッキング
次にご紹介したいのは、無人島でのトレッキング。向かうは壱岐の北側に浮かぶ無人島、辰ノ島。勝本港から船で10分ほど、真っ白な砂浜と驚くほど透明な海がフォトジェニックな、壱岐の隠れた観光名所です。実は前2回のコラムでトップを飾った写真も、この辰ノ島の海水浴場で撮られたもの。そんな海が魅力の辰ノ島ですが、実は海を望むトレッキングコースという、もうひとつの楽しみ方もあるんです。
遠浅の海水浴場から振り返ってみると、砂浜から続くトレッキングコースが。海の家で杖を借りていざ出発。潮の満ち干きによってできる海水の小川を渡りながら、島の高台を目指します。
砂浜に埋め込まれた石の道からトレッキングコースが始まります。
緑の谷間に沿って山肌を登りきると、そこには島の裂け目のような岩壁が。穏やかで透明な海水浴場とはうって変わって、ここから見えるのはダイナミックに波立つ玄界灘。はるか遠くの海面から響いてくるのは、岩にぶつかっては砕ける波の音。海に削られて現れた地層を前に、島の歴史に思いを馳せるひとときです。
人が豆粒のように見える、巨大な岩壁。
トレッキングコースの終着点は、海面から高さ60メートルの断崖絶壁。なんとこの崖、柵がひとつもないんです。真っ青な海と空のパノラマに包まれて、心が空っぽになるようなリフレッシュ体験が楽しめます。
足元はすぐ海、の断崖絶壁を楽しめます。
崖の突端を折り返して下り道へ。ここからは、海水浴場はもちろん、船で賑わう港の様子まで一望できます。玄界灘の荒海と、ゆったりとした勝本港、ひとつながりの海でふたつの顔が楽しめるのも、辰ノ島トレッキングのポイント。
海水浴場の向こうには勝本港まで。
こんなふうに海水浴もトレッキングも楽しめる辰ノ島ですが、実は島へ向かう遊覧船の運航は10月末または11月末まで(※年によって異なるようです。必ず事前にご確認ください)。例年通りなら再開は3月、つまりこのコラムが掲載される頃は、残念ながらちょうどお休み中ということに。えーっという声が聞こえてきそうですが、ごめんなさい、それでもどうしてもみなさんにご紹介したかったんです。
個人的には、ぜひ来年の夏のやることリストにメモしておいてほしい、取っておきのスポットです。
島の温泉「湯本(ゆのもと)温泉街」を満喫
トレッキングやマリンスポーツを楽しんだ後、疲れを癒やすのにぴったりなスポット、といえば温泉。 島の西側に位置する湯本は、古くから湯治場として知られた温泉地。温泉旅館の露天風呂から、1回300円の庶民的な大衆浴場まで、バリエーション豊かなのも湯本の特徴です。
島なのにさまざまなバリエーションの温泉が(写真提供=壱岐市役所)
リッチな温泉旅館の海が見える露天風呂もいいですが、ここはぜひ地元の人たちが集まる大衆浴場に行ってほしいところ。扉を開けたら、脱衣所と浴室が一緒になっている、いかにも地元の人たちのお風呂といった風情のある大衆浴場だったり……。ひと仕事終えた地元の人たちが赤錆色のお湯にゆったりと体を伸ばしている、そんなローカル感あふれる温泉体験ができること間違いなしです。
もし今行くなら、ぜひ旬の魚を
最後に、もしこのタイミングで壱岐に行くなら、お伝えしておきたいのが壱岐の魚の美味しさについて。
いつの季節も美味しい魚に恵まれている壱岐ですが、水が冷たくなるこれからの季節、脂の乗った寒ブリや寒サワラ、ふっくら濃厚なカキが特に美味しくなってきます。
冬に向けてますます美味しくなる壱岐の魚たち。
風が冷たくなってきた今日このごろ、壱岐の人たちが口を揃えてこう言うんです。「壱岐の魚はこれからがうまい」「冬に来ないのは本当にもったいない」と。
そうは言っても、実は夏の段階で福岡よりもさらにワンランク上の魚を何度も味わっているんです。さすが壱岐の魚はすごいなあと感動していたんですが、冬はもっと、となるとどれだけうまい魚なんだろう。刺身はもちろん、寒くなるこれからの季節、鍋料理も気になります。これはやはり行くしかないですね。
と、まだまだたくさんの魅力が隠れていそうな壱岐。これからやってくる冬に、ひそかにワクワクが止まりません。
ちなみに壱岐市は、福岡市から直行便が出ている5つの島(壱岐・対馬・上五島・下五島・屋久島)、6市町による広域連携事業「Re島PROJECT」を実施中。サイト内のムービーには、今回紹介しきれなかった見どころもたくさん登場します。そちらも是非どうぞ。