column 2023.9.28
 

福岡R不動産、引っ越します(前編)

本田雄一(福岡R不動産/DMX)
 

突然ですが、「福岡R不動産/株式会社DMX」15年ぶりにオフィスを引っ越します。今回は新しいオフィスのご紹介に先駆け、これまでの僕らのオフィス変遷と、目まぐるしい発展を遂げる福岡の街の変化、物件探しの裏話などを前後編でお届けします。


オフィスを移転します。

そもそもなぜ移転するかという話ですが、これまで親しんできた春吉のオフィスには、今から15年前に引っ越して来ました。当時すでにこの建物はそれなりの築年数が経っていたため、オーナーさん側は将来の建て替えも見越して、更新のできない「定期借家契約(以下、定借)」を条件に募集していたのですが、契約期間をなるべく長くして欲しいという僕らの要望を聞き入れていただき、「15年の定借」にて晴れて入居させていただきました。

15年間お世話になった春吉オフィス。鉄骨&天井剥き出しのスケルトン空間で広々快適でした。

「15年なんてずーっと先の話だし、そんなに時間が経つ前に引っ越すだろうなぁ..」なんて油断していたのですが、ついにその時が来てしまいました。

今や春吉はビジネスホテルや飲食店ビルの新築ラッシュの真っ只中にあり、土地価格は暴騰し、この建物が建て替えになるのも至極当然なのですが、借りた当時はまだ未開の地だったのを懐かしく感じます。


これまでのオフィスたち

せっかくなので、もう少し遡ってこれまでのオフィス変遷をお届けしてみます。

福岡R不動産をスタートするにあたり、2007年に最初に借りた第1号オフィスは、今泉にある「エレベーターなしの5階、18㎡の狭小ワンルーム」というストイックな物件でした。

天神が目の前なのに窓から今泉公園の緑が見える癒しが気に入った。

当時の若者カルチャーの中心「天神西通り」まで歩いてすぐ、という立地にも関わらず、まださほど開発されておらず、雰囲気のいい飲食店とラブホテルの混在するほっこりした空気感。階段で5階登って出社した瞬間に疲労困憊という環境ながら、個性的な物件を求めて走り回っていました。

が、すぐに手狭になり、元和室だった押入れの中板をデスクにするドラえもんもびっくりなワークスタイルのスタッフもいる始末。

そんな時に、窮屈さから解放されるべく、「とにかく広いところがいい!」と探して出会ったのが今までお世話になった春吉のオフィスでした。

何もない箱だった改装前の状態。塗装などDIYもしつつ作り上げた。眺望の抜けたルーバルもあるし、広さは約4倍。しかも階段が5階→3階になって歓喜でした。

10年ほど前の春吉。「ご休憩」できる建物だらけだった。

(Googleストリートビュー)

広々したスケルトン空間とルーフバルコニーが気に入ったものの、当時の春吉は、色で例えるとグレー(怖い皆さん)とピンク(ラブホ街)を混ぜたようなアングラなエリアでした。春吉育ちの先輩から「春吉に事務所構えるなんてやめとかんね」とアドバイスをもらったのを覚えていますが、若気の至りからか、ブルックリンの危ない倉庫街にアトリエを構えるクリエーターへの憧れからか、「逆に面白そう!」とノリノリで引っ越して来ました。

ルーバルが本当に気持ちよかった。そして、当初の心配とは裏腹に、至って平和な街でした。


進化を遂げた春吉の街並み

当時そんな危ない匂いのする街だった春吉エリアも、驚くほどの変貌を遂げました。今では新築のビジネスホテルに民泊運用のマンション、飲食店ビルが建ち並び、ローカルも旅行者も、外国人も日本人も、日夜人が行き交うおしゃれエリアになったと言っても過言ではありません。

同じ交差点での比較:(上)10年ほど前の春吉 vs(下)今の春吉

(Googleストリートビュー)

癒しのルーバル前にも巨大なホテルが建築された。

天神と中洲の間という元々高かった立地のポテンシャルが発揮され、さらには川向いのキャナルシティ側には地下鉄七隈線の「櫛田神社前駅」もでき、これからが益々面白くなりそうな期待でいっぱいです。(今の春吉の面白さを深掘りするだけで記事が一つ書けそう...)

さて、すっかり素敵な街になった春吉ですが、実は僕らにとってはちょっと悩ましい問題が出てきました。

「春吉、高くなりすぎて次の物件が見つからない...汗」

福岡市自体がこの10年日本の政令都市トップレベルの人口増加率で成長してきた街でありながら、中でも春吉は地価も賃料も鰻登り。さらには出てくる物件のほとんどが築浅だったりするので、もはや僕らが借りられる/借りたい建物に出会えない、という問題が出て来ました。普通に同じ広さの物件を探すと今の3倍以上の賃料に...。

あ、これはどこかで聞いたことがある話じゃないですか。かの有名な「ジェントリフィケーション(都市の高級化)」。ロンドンやニューヨークで事例の絶えない、安かったエリアが開発され、高級化し、元々いた人たちが転出を迫られるあの現象です。

BrooklynのジェントリフィケーションBefore→Afterイメージ(同じ場所ではありません)

ブルックリンのクリエーターに憧れた結果、見事にジェントリフィケーションの波に飲まれてしまった僕らは、次なる拠点を求めて物件探しをスタートしました。

後編へ続く...

10/6(金)より、新オフィスにて営業いたします。
ご来社いただく際はご注意ください。

新オフィス住所:
〒810-0023 福岡県福岡市中央区警固2丁目3-26 1F
(地図)

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