column 2015.12.15
 
Rトピックス

ふと、那珂川町へ 〜都市の近くにあった山里の暮らし〜

長谷川 繁(福岡R不動産/DMX)
 

これまで身近すぎて意識できていませんでした。福岡市の都市部へ車で30〜40分という通勤圏で、雄大な山々ときれいな川、そして田園の広がる場所があったということを。

海が身近な暮らしを得られる糸島市、福津市。対して、山里が身近にある那珂川町。

福岡市を中心にまわりを見ていると西には糸島市(いとしまし)、東には福津市(ふくつし)といった自然の豊かな人気エリアがあります。どちらの町も最初に浮かぶ自然のイメージは海でしょうか。

では逆に、緑や川があって山里のような風景に囲まれた暮らしはどこでできるのか?

しかも福岡市内への通勤も苦にならないほどの距離で。そんなことをふと考えながら、よくよく航空写真を眺めていると…、実はとっても身近なところに答えはあったのです。

その場所こそが福岡市の南手に隣接する那珂川町(なかがわまち)。

那珂川町には新幹線の車両基地があるため、なんとJR沿線でもないのに博多駅から直結で新幹線が走っています。しかも博多駅から那珂川町にある博多南駅までの所要時間は10分弱、乗車賃は300円(2015年現在)。車で福岡市中心部へ向かっても朝夕の混雑時以外はおよそ30分程度で着いてしまう。この距離感や利便性を備えている点は、那珂川町の立地を語る上では絶対に外せない大きな魅力であり特徴でもあります。

那珂川町の自然

ただし、那珂川町においても駅周辺は、ある程度の開発が進んでおり、ロードサイド店舗と住宅街を中心とした町並み。そこから車で10分、15分と進んでいくと雄大な山々ときれいな川、そして田園、まさに里山の風景が車窓に広がっていきます。ここが今回のお話の中心となる那珂川町の最も南に位置する「南畑(みなみはた)地区」。前述の通り、都市部からは車で30〜40分のアクセスなのですから、まさに都市の近くに隠れていた田舎と言えるでしょう。

南畑の長閑な風景
自然をそのまま活かした中ノ島公園、桜に紅葉、夏場には子どもたちが毎日のように川遊びをしています。

豊かな自然に囲まれた環境は空気が澄んでいて気持ち良く、背振山系のきれいな水源を持つ土壌でつくられるお米や野菜はとても美味しいと評判です。「福岡市内の飲食店も実は那珂川町まで野菜を買いに来ている人も少なくないんだよ」と教えてくれたのは、昼食をとったうどん屋の大将。実は、大将は数年前に那珂川町へ来た移住者で、那珂川のきれいな水に惹かれて南畑へやって来たのだとか。奥さんと仲睦まじくカウンターに立つ姿にはほっこりしてしまいますが、実は知る人ぞ知る名店で大将の語る生の声にはやっぱり説得力を感じます。

那珂川のお米や野菜の美味しさの秘密は良質な水源にあるそうです、ボーブラとはこの地域で栽培されているかぼちゃの一種。
過疎化に悩む南畑地区、その一方で移住者も

那珂川町全体では駅周辺のエリアを中心としたマンションや住宅地の開発により、昭和60年代には3万人規模だった人口は、微増を繰り返しながら現在は5万人前後まで増加。ただし、山間部に位置するこの南畑地区はその他多くの田舎と同様に少子高齢化の波が着々と押し寄せ人口は減少傾向に。地域の子どもたちが通う南畑小学校は、1学年1クラス、全校生徒も100名を切っているのが現状です。それでも、地域の子どもたちはほんとに元気がいい、大きな声で挨拶をしてくれて、どこかたくましく生き生きとしているようにも見えます。それはやはり南畑の大らかな環境と温かい目で子どもたちを見守る地域の人たちの存在が大きいのかもしれません。

地域にはたくさんのクラフトの工房があり、イベント時にはワークショップも。小学校の課外授業で工房を訪問することもあるそうです。

また、一方で気になるエピソードが、30年ほど前から芸術家がこの南畑に移住し工房を持ち始めたと言うこと。さらに、その知人や口コミで同じように移住したりアトリエを構える人が増え、一部の間では、芸術の里として知られるようになっています。昨年からは、南畑美術散歩というアートイベントも開催され多くの人が訪れ賑わったそうです。
今回の訪問でも、先ほどのうどん屋の大将も然り、ほっと落ち着くカフェやパン屋などがあったり、他にも皆さんにご紹介したくなるような移住者の方々や場所と出会うことができたのはちょっとした驚きでした。人口減少の影で、南畑の環境に惹かれて移り住んでくる人たちがいるのも事実。南畑には秘められた可能性がまだまだあるように思えてなりません。

上段:通い続けたくなる個性豊かなカフェやパン屋さんもあります、下段:南畑美術散歩のひとコマ
そして、新たなプロジェクトが動き出します

今回ご紹介した那珂川町南畑地区では、町役場や地区の区長たちで結成された南畑地域活性化評議会、愛称「南畑ぼうぶら会議」が一体となり、地域を盛り上げるために日々活動を続けています。
そして、私たち福岡R不動産もチームの一員となり、新たな南畑の魅力の発掘と発信、まずは南畑を知ってもらい、それから実際に南畑に移り住んでいただくためのサポートをさせていただくこととなりました。

先日行われたワークショップ、地域の住民と若い世代が交流し地域のために意見を交わしています。

特にこの地域に必要なのは、今、真剣に地域を想い、労力を注いでくださっている高齢の区長さんたちの次の担い手となる若い人材や子育て世代の方々です。南畑の自然を子どもたちにも伝えたい、そして小学校の生徒数を増やしたい。地域の皆さんからはそんな強い想いを感じます。

南畑地区には移住を検討する上で以下のような大きな魅力があり、きっと背中を押してくれる要素。

・自然豊かな生活や子育て環境
・天神・博多の都市部までも通勤可能なアクセスと距離感
・南畑ぼうぶら会議を中心とした地域コミュニティ
・意外と多い先輩移住者、工房やカフェなど独特な文化や場所の存在

ただ、田舎特有の空き家はあるけど借りられる物件がないという問題もあり、移住希望者と空き家をマッチングしていく仕組みを町役場や地域の皆さんと協力してつくっていきます。定期的にコラムでもご紹介していきますので乞うご期待ください!

子どもたちにとっては田んぼも遊び場、これが南畑の日常の風景です。

海の身近さが糸島や福津なら、山のある暮らしこそは那珂川町。
正直、身近過ぎて僕たちも今まではあまり強く意識をしていなかったのですが、訪れるたびに南畑のことが好きになっていく自分が今ここにいます。南畑のことをもっともっと多くの人に伝えていきたい、足を運んで欲しい、そんな想いを込めてプロジェクトスタートします。

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