column 2011.4.7
 
Rトピックス

田主丸、そして筑後~リラックスエリア=海、ではない選択肢~

本田雄一(福岡R不動産/DMX)
 

海派の僕が気づいてしまった、山側の福岡の魅力。

アツいんです、田主丸(たぬしまる)。耳納連山(みのうれんざん)のふもとに広がる果樹園、そこからどこまでも続く見晴らしの良い田園風景、ゆったりとした時間の流れる「山苞(やまずと)の道」。

海を求めて福岡の西、糸島に行く選択肢もあれば、山と川と畑を求めて南の筑後に行く選択肢もある。糸島のサンセットロードほどオシャレではないかもしれないけど、田主丸のヤマズト・ロード(勝手に命名)にもカフェ、ギャラリー、雑貨屋さんなどが点在していて、その熱気が伝わってきます。

あの油山の山小屋カフェも田主丸に移転したし、最近では「山苞の道」沿いに物件を買いたいという人が「待ち」の状態になっているというから驚き。人が集まってくる魅力は一体何なのだろう。

その魅力を探るべく、今回は田主丸を中心に筑後エリアを探訪してみたいと思います。

まずは、ざっくりとした位置関係。
福岡から車や電車で1時間ほどの場所に、筑後エリアはある。

福岡と筑後エリアの位置関係。

山の魅力って何だろう。と、海派の僕としては、半信半疑な状態で、軽い気持ちで行ってみたのだが、川の魅力にすっかりはまってしまった。やはり水辺はいい。

子供のようにはしゃぐ大人たち(左)/こんな家に住んでみたい!(右下)

いま、一番熱い田主丸。

「山苞の道」沿いの風景。

耳納連山のふもとを山に並行して走る「山苞の道」。下を見晴らせば、なだらかな斜面に果樹園が広がり、その向こうにはだだっ広い平地がどこまでも続いている。そして、どこからでもこの耳納連山が見えるのがこの地域の特徴だ。確かに、こんな地形はあまり見たことがない。それが人を引きつけている一つの要因なのかもしれない。

田主丸には300年以上続く酒造や、たくさんの果樹園がある。

個性的なカフェ、ギャラリー、雑貨屋が増えてきている。

山苞の道沿いには、個性的なお店が点在している。その多くは、他の地域から移住された方が営んでいるそうだ。一年を通して、緑を楽しめるのも魅力の一つだとか。

5年前に田主丸にお店ごと移住された、カフェ「ストロベリー・フィールズ」さんにお聞きしました。

カフェ「ストロベリー・フィールズ」。

――どんな経緯でこちらに移住されたのですか?

「久留米の中心部で、長年飲食店をやっていました。ある時、もっと静かで自然豊かなところでお店をやりたいと思い始め、よく遊びに来ていた田主丸で物件を探し始めました。本当は、人里離れた山奥が理想だったのですが、カフェとしての集客を考えると、現実的に県道沿いもしくはその付近という選択肢ですね。古民家を探していたところ、タイミングよくこの家の売り情報をキャッチし、すぐに決めました。」

――古家を購入されたのですね。

「未改装の状態で引っ越してきて、徐々に手を入れていきました。和室を潰つぶして土間にしたり、間仕切りを取っ払ったりしていますが、基本的には古さを活かしています。」

――田主丸に住んでみての印象はどうでしょう?

「移住してきた頃は、この辺りにお店は少なかったのですが、ここ数年でカフェを始め、いろいろなお店ができているそうです。引っ越してきて良よかったことは、時間がゆ~っくりしていること、それから水がとってもおいしいことですね。失礼な話なんですが、田舎のおばちゃんの印象が変わりました(笑)。みんな綺麗なんですよ。あれは絶対、水のおかげ(笑)。

あとは、野菜もおいしいですね。『「家で作った野菜が余ったので……」』とご近所さんからのお裾分けは余りと思えないほど多くて、とても助かってます。家庭菜園といっても、こっちではその規模が大きいので。おかげで野菜を買うことはほとんどなくなりました。田主丸の地域のコミュニティは、外から引っ越してきた人にもオープンに受け入れてくれる土壌があると思います。」

ストロベリー フィールズ
住所:久留米市田主丸町益生田1399-2
TEL:(0943)72-2024
定休日:不定休
営業時間:11:00~22:00

今度は八女市に足を伸ばしてみる。

「八女」。町家を使い、1階に店舗兼工房、2階に居住というスタイルが多い。

八女の中心部では、伝統的建造物群保存地区という、白壁の町家を保存していくまちづくりが行われている。田主丸とは一転、とても文化的な香りが残っている町。実際に多くの町家は、1階を店舗兼工房、アトリエとして使い、2階に住むというスタイルで使われている。地域外から移住してきて、カフェをやる人や、工房を持つ人が徐々に増えているらしい。ここにもなにか引きつける力があるようだ。

スナック in 神社

八女の中心部にある土橋市場。これが笑えてしまう。なんと、神社の敷地の中に、市場があるのだ。しかも、メインはスナック。スナックin神社、なんて聞いたことがない。

そして最後は、柳川市。

家の裏にカヌーが! 柳川は水郷の町。

柳川は水郷の町として広く知られているとおり、お濠が縦横無尽に走っている。そして、お濠に面して店舗、住宅が建ち並んでいる。移動をカヌーでできたら面白そうだな、と思っていたら、家の裏にカヌーを備えているのを発見! 素敵です。

筑後エリアの魅力について考えてみる。

今回の筑後探訪では、改めて海だけではないリラックスエリアの魅力を探ってみました。特に感じたのは、「流れている時間がゆっくりである」こと、そしてなにより「人がいい」こと。ふらっと立ち寄った場所でも、親切に情報を教えてもらったり、お茶を出してもらったり、これは日々忙しく時間が流れている都会ではなかなか体験できないもの。

中心部に海も山もあって、バランスの良い福岡と言えど、やはり1時間足を伸ばしてみると、そこには全く違った時間の流れがありました。忙しい日々に疲れたときは、是非筑後へふらっと遊びにいってみてください。

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