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column 2014.2.7
 
【連載】糸島移住者インタビュー
vol.1 「その時」に最善な場所を選ぶ暮らし方
藤井優子
 

糸島に移住して来られた方々に、連続でインタビューをしていくシリーズ、始めます!

移住を考えている人へのヒントに

海・山・川の大自然、豊かな食に、中心部へのアクセスの良さ……。住環境の魅力に溢れた糸島は、移住先として昔から人気のエリアです。近年首都圏から福岡への流入が増える中、その注目度はさらに上昇。全国各地からの移住者・移住希望者が、続々と増えています。

でも、実際に移住をするとなると目の前に立ちはだかるのは現実的な問題の壁。「住む家はどうやって探せばいいの?」「仕事はあるのか?」「地域の人に受け入れてもらえるか心配……」などなど。

そこで今回は、これまでに糸島に移住した方々にインタビューを実施。「移住に至るまでの経緯やハードル」「仕事や子育てなどの生活面」「移住を検討している人たちへのアドバイス」などを聞いてきました。第1回は、2009年にイギリスから糸島へ移住してきた西出裕加子さんへのインタビューをお届けします。

イギリスから糸島に移住して4年

お庭でお茶をしながら、子供たちと遊ぶ西出さんのご家族。イギリス人のご主人と、お子さんふたりとこの地で暮らしています。

──「糸島へ移住する前は、イギリスに住んでいたんです」。西出さんは、現在、外資系ホテルのマーケティングマネージャーとして働いています。日本の大手広告代理店を退職後、イギリスのリサーチ&コンサルティング会社へ転職。そこで出会ったイギリス人のご主人と国際結婚。イギリスでの生活は、仕事・プライベートともに満足のいくものだったそうです。そんな生活を手放して、なぜ日本へ、またその中でも糸島への移住を選ばれたのでしょうか?

西出:きっかけは、1人目の子どもを妊娠したことです。イギリスの暮らしは気に入っていましたが、そこで子どもを産んで育て始めてしまったら、もう日本に戻ってくるタイミングがなくなってしまうと思ったんですね。国際結婚ですが、やはり日本の文化や言葉を学んでほしいと思ったので。「Now or never(今か、もしくは未来永劫ないか)」だと思って、妊娠30週目に、猫2匹と主人と一緒に帰ってきました。

──帰国後は、ひとまず実家のある福岡市内へ。20年ぶりの母親との同居は難しく、すぐに引越しを考えることに。でも、住む場所をどこにするのか。産休を終えて仕事を再開することまで考えると、やはり関東がいいだろうか。「日本の狭いマンションにはとても住めない」というイギリス人のご主人の意向もあり、まずは都心に近い鎌倉や葉山で物件を探したそうです。

西出:実際に不動産を巡って、7~8件くらい見て回りました。でもそのエリアでは、6000~7000万出しても、隣の家が近くて庭も小さい物件ばかり。ましてや、3000~4000万ではまったくいい物件がなかったんです。それに、都内へ通勤することを考えても、片道2時間はかかってしまう。当時30代後半だったのですが、次のライフステージとしてそんな生活はもうしたくありませんでした。移住を急いでいたわけではなく、時間もあったので、鎌倉・葉山での物件探しはいったん保留になったんです。

移住のきっかけとなった「サンセットロード」の海岸。

──振り出しに戻った物件探し。糸島という土地を知ったのは、家族でドライブに行ったときのこと。

西出:糸島に行ったのはそのときが初めてでした。車で糸島のサンセットロードをドライブして、すぐに気に入ってしまったんです。「まるでタイみたい! 日本にこんなところがあるなんて!」って(笑)。鎌倉や湘南と比べて海の色が違うと感じましたし、商業化されていないのがいいなと思いました。外国人も多くて閉ざされていない雰囲気も良かったですね。ドライブ途中あちこちで外国人を見かけるので、イギリス人の主人や、海外生活の長い私は安心できたんです。
改めて物件を調べてみると、驚くほど安くて、それが移住の大きな後押しになりました。もともと家探しの条件だった広い家と庭が安価で手に入ること、綺麗な海が近いことが決め手になりましたね。

柔軟に順応する

──本格的に物件を探し始めてからは、早い段階での家に巡り合え、とんとん拍子に進んだ糸島への移住。実際に引っ越してからギャップを感じなかったかどうかを伺うと……。

西出:特になかったですね。もともと順応性が高いので、「こんなはずじゃなかった」ということが基本的にないんです。一生糸島に住もうという意気込みで移住したわけでもないですし。思いもよらないことはいつだって起きるもの。嫌だったらまた引っ越せばいいんですから。
越してきてすぐに、ゴキブリがいっぱい出たときには、田舎っていやだなぁって思いましたけどね(笑)。隣のおばあちゃんに「私なんか素手で掴むよ」って言われてさらにびっくりして……。今となってはそれも笑い話です。

──仕事面でのギャップもありませんでしたか?

西出:糸島に越してきて現在の職場に移る前は、自宅の一室を仕事場にしてフリーランスで働いていました。子育てをしながらだったので、オンオフの境目なく、全体的に60%くらいのパワーでずっと続けられる感じは良かったんですが、次第に100%の力が発揮したくなりました。スローライフへの憧れもあって糸島に移住したんですが、こんどは逆にメリハリのある生活やチームで仕事をする楽しみが恋しくなったんです。それに、2人目が生まれたことで、子育てと仕事の両立自体が難しくなりました。
今の職場に転職したのは、ある求人を見つけたのがきっかけ。外資系ホテルでの従業員向けの英語教師の募集だったのですが、行ってみると上層部の方が出てきて、別のポジションで働かないかと勧められたんです。その話が進み、マーケティングマネージャーとして働き始めました。

家から歩いてすぐのところに海が広がり、子供が遊べる広々とした庭が手に入る糸島。まさにスローライフ。

──引っ越し同様仕事も、「嫌だったらやめればいい」というのが西出さんのスタンス。ラッキーなことに、いざ始めてみるととてもやりがいのある仕事だったそうです。

西出:私の働いているホテルは、1000室以上の客室を備えており、グループの中でもアジア圏最大の施設。外資系と言っても福岡だと支社の末端であることが多いんですが、ここは東京の支店と同列の扱いなんです。福岡にいながらこれほど刺激のある仕事ができるのは、なかなかないんじゃないかと思いますね。先日もシンガポールでカンファレンスに参加したりしましたし、非常にやりがいがあります。上司はオーストラリア人やスイス人で、意志決定が大変早い。上司とは英語で話して、部下とは日本語で話しています。

──現在、糸島に越してきて4年。西出さんの住む寺山地区は、糸島の中でも農村的な色合いが濃いエリア。昔から住む地元の方達は人と人とのつながりを大事にしており、たとえば隣のおばあちゃんは、週1~2回食べ物のおすそ分けをくれたりするそうです。一方で、週末になると西出さん一家はいろいろなところへ出掛けて、他の都市からの移住者と一緒にイベントを楽しむことも。

西出:糸島のコミュニティーのいいところは、人と人との関係性が窮屈ではなく、距離感が程よいこと。「こんなときには、○○さんのところに行けばいい」というのがわかっているんですよね。ゆるくつながっていても、困ったときには誰かが助けてくれます。
うちの隣に住むおばあちゃんなんて、「都会の人だからなんもできんやろ」と言っていろいろ世話を焼いてくれます。週に1、2回のおすそ分けも、最初は食材をもらっていましたが、好意に甘えているうちに完成品(料理したもの)が届くようになりました(笑)それがまた、おばあちゃんの味で美味しいんですよね。そういう好意が苦手な人もいるでしょうが、私は好きです。
すでに移住者が多くて、そのつながりが強いことも嬉しいです。たとえば、マンションのお隣さん同士なんて関係は、どこか窮屈に感じることもありますが、移住者同士のつながりは価値観が通じ合う分、心地よいです。知人をたどれば、みんなつながっていると思いますし、移住者を中心に集まってパーティーをしたりすることもあるんですよ。

懐かしい雰囲気が残る寺山地区。

──いろんなコミュニティーを経験する中で、その間の隔たりを感じることもあるとか。

西出:糸島にはまだまだ昔の風習が残っています。長男が家を継いで、お嫁さんを取るとか。嫁姑関係が複雑だとか。結婚する年齢も早いので、自分の同年代ですでに孫がいるなんてことも当たり前です。私が住んでいる寺山地区は昔からの地域なので、その傾向が強いですね。そういうのは、正直抵抗を感じます。ライフスタイルが違うので、何を話していいかわからないと感じることも……。そういうことを踏まえると、ここの環境は気に入っていますが、一方で他の移住者やUターン組と話せる場があることは、バランスを保つ上でとても大きいです。
自治会に入らない移住者が多いのも、元々の住民と移住者との間の隔たりを生んでいる気がします。糸島の方にとっては、地元の自治会に入るのが常識。そういう慣習がない移住者にとっては、会費の高さや必要性がなかなか理解できなかったりします。

──糸島とひとくくりに言っても、慣習が根強く残る地域もあれば、新興住宅地など特色はさまざま。移住先を検討する際には、建物や景色などの条件に加えて地域との相性も判断材料になりそうです。

納屋で子どもと一緒にバイクいじりをするご主人。

子どもには「どこでも生きていけるようになって欲しい」

──続いて、5歳と2歳の子を育てていく中で感じる、子育て環境としての糸島について伺いました。

西出:糸島では広い家や庭が持てるので、自分のことをしながらも子どもを自由に遊ばせられるのがいいですね。街中だと、いろんな危険に対して常に気を張っていないといけないですが、そういった余計な心配がないので、子育てのストレスが少ないです。夏には、庭で水遊びをさせたり、花火をしたり。その傍らでビールを飲みながら、子どもが自由に走り回ったりする様子を眺めていると、こんな日常って素晴らしいなあと思います。
一方で、今住んでいる地域は、子ども同士の家が遠いのが不便だったりもします。一人で遊びに行かせるわけにいかないので、親同士でセッティングをして、送り迎えまでしないといけない。「何時に連れて行くから、おやつ食べさせてね」とか。歩いて行き来できる距離に友達の家があったらいいなとは思います。

納屋で子どもと一緒にバイクいじりをするご主人。

──糸島の学校教育のレベルについて懸念する声が親御さんの間で多いとも言われています。

西出:確かに中学・高校の公立教育のレベルは低いという声は聞きますね。心配して、小学校から私立や国立に通わせなさいという親御さんもいます。でも、私は世界中どこでも生きていけるようになってほしいから、子どもの教育を日本だけで終えるつもりはないんです。将来的には海外での教育も考えているので、日本にいる間は日本の公立教育で良いと思っています。

──「家族にとっての、その時一番大切なこと」に合わせて、住む場所や環境も選んでいきたいと話す西出さん。これから糸島へ移住を検討している人にアドバイスをお願いしました。

西出:糸島に空き家はたくさんあるけど、なかなか物件として表に出てこないのが実情。糸島の人たちは、空き家でも家を売りたくないんです。たとえば、私が住んでいる寺山地区には名字が3つしかありません。つまり、何代かさかのぼるとみんなつながっているんです。よく知らない人に家を売って、もし何かあったときにご先祖やご近所に申し訳ないという思いが、地元の人たちには強いんですね。
すでに移住している人の中では、まず、糸島に近い福岡市西区の賃貸物件に住んで地元の人たちとの交流を深めてから、糸島の物件を買って本格的に引っ越すパターンが多いですね。近くに住んでみると、地元の物件の情報も直接入ってきやすくなりますから。そういった形で自分でも探しつつ、不動産屋さんの情報も聞いたりして、いい物件に辿り着けると良いのではと思います。

木造の納屋に置かれたミニクーパー。意外に似合います。

──最後に、今後の展望を教えてください。

西出:私にとっては、「プランを持たないことが、ライフプラン」。大切なのは、その時の気分に忠実に動いて、環境を変えていけるような柔軟性を常に持っていること。今は、子育てが最優先事項なので、糸島の環境を重視しています。子育て、仕事、老後……その時のライフステージに合わせて、最善の選択をしたいですね。そのため選択肢の幅を持てるようにはいつもしていて、イギリスの永住権もなくさずに更新するし、子どもも二重国籍のまま。たとえば、家族の誰かが大きな病気にかかったら、迷わず医療費のかからないイギリスに移住しようと思います。生活にしても、仕事にしてもそうですが、どんなハプニングが起こっても、自分のやりたいようにやれることが大切。そのためのフレキシビリティーとキャパシティーを持って、「その時」を生きていけたらと思いますね。

──「世界中どこにいても幸せになれると確信している」と西出さん。自分の子どもたちにも、世界中どんな国でも生きていけるようなタフな人間に育ってほしいと話します。


次回は、糸島の移住者の中でも、いろいろなかたちで「場所づくり」をしている人たちにフォーカスします。二丈の集落でシェアハウスを営む女子や、スーパーの跡地を改装してカフェを営むアートディレクター、米の蔵をアートスペースにしてしまった画家など、新たなムーブメントを巻き起こしつつある移住者の取り組みに注目です。

■今回お話を伺った方のプロフィール

西出裕加子さん(42歳)/糸島移住歴 4年/仕事 外資系ホテルのマーケティングマネージャー/その前に住んでいた場所 イギリス
※2014年1月時点

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