2013.5.15 |
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ちくご移住計画2013始まる~仕事付きトライアルステイ~
今年、トライアルステイ「ちくご暮らし」は筑後地域で仕事をしながら暮らす移住体験プログラムへ進化します。
※イベントは終了いたしました。ありがとうございました。
福岡R不動産では2011~2012年の2年間にわたり、約2~3週間体験居住できるトライアルステイ「ちくご暮らし」を運営してきました。応募総数は164組、その中から48組の方がトライアルステイに参加し、中には実際に筑後地域に移住した方や二地域居住を始めた方も。
筑後地域には都会とは違った自然環境があり、独特のスピード感で時間が流れています。また、たくさんの個性的なお店や商品があったり、独自の文化、人情味とこだわりを持った人が多いことで、全国の中から移住先として候補に選ばれているようです。
一方で、移住へのハードルも見えてきました。特に大きいのは、田舎には仕事が少ないという事実。
もちろん小さくても魅力的な会社はたくさんあるのですが、都会で仕事を見つけるのに比べると、正直大変です。
その点フリーランスの方は比較的移住しやすいのですが、それでも仕事の拠点を変えることはそれなりに不安だったり、安定するまでに時間がかかったりします。
そこで今年は、体験居住の要素に加え、「フリーランスの方には移住の助走期間としてまちの仕事を発注する」、「仕事を探したい人には筑後地域が持つスキルを伝える」プログラムを行います。
スキルをまちおこしに活かして暮らす、スキルを磨きながら暮らす、バラエティ豊かな5つのプログラムを用意しました。
具体的には地域の情報誌をつくったり、まちの魅力を撮影したり、アート作品をつくったり、木工職人のもとで技術を学んだり、果樹農家で農業を学んだり。
どれも2~7カ月の比較的長いプログラムで、自然を感じられる住居付き。
地域の人と働き、遊び、暮らす、濃くて楽しい時間になりそうです。
一昨年トライアルステイ「ちくご暮らし」に参加し、その後東京から移住された和田さんに移住の経緯、移住後の話を伺いました。
和田さんお気に入りのカフェでのインタビュー。
ーー移住の経緯を教えてください。
移住前は、東京で音楽の仕事をしていました。震災後にどこで子育てをするのかを真剣に考えるようになり、福岡も候補に挙げていたところにトライアルステイの話があり、体験居住後すぐに移住を決めました。
ーー実際に住んでみていかがですか。
1年半住んでみて、まず子育て環境として本当に良いなと思います。たまたま通わせたいと思っていた教育方針の幼稚園があったというのもありますが、すぐに自然豊かな環境に子供を連れて行けるのが良いですね。
それにこだわりを持った魅力的なお店も多いですし、買い物などの生活も全然不便じゃないです。そして、何より食べ物が安心で、安くておいしい。
ーー仕事環境としてはどうでしょうか。
仕事は、1カ月おきに東京と筑後地域を行ったり来たりするのは大変ですが、空港まで近いですし、最近はLCC(格安航空会社)もありますしね。
あと意外だったのが、自営業の方が多いことです。東京で音楽をしていると何かとアウトサイダーな気分になりますが、こっちではそんなことはなく、自営業の1つとして考えてくれるのが新鮮でした。全然排他的ではなくて、ニュートラルに受け入れてくれて、とても居心地が良いです。
左:トラアルステイの物件でギターを弾く和田さん。 右:カフェでのライブ。
筑後地域の住環境としての魅力は『トライアルステイ「ちくご暮らし」のすすめ(2011)』や『田主丸、そして筑後エリアにいってきた』、『トライアルステイ「ちくご暮らし」2011レポート』でご紹介してきましたので、詳しくはそちらを振り返っていただきたいと思いますが、よく探してみると、筑後地域には魅力的な「仕事」もたくさんありました。
ひとくちに筑後地域と言っても実際には12の市町にわたる地域なので、産業も多様です。
家具生産高日本一の大川市には木工技術を活かして建築家と一緒に空間をつくっている職人さんがいたり、九州有数の果樹の生産地であるうきは市には「山の手農業集団」や「うきは百姓組」、「アグリオールスターズ」といった先鋭的な農業集団がいたり、有明海に面する柳川市からは「YUZUSCO(ゆずすこ)」「のりネーズ」「むつごうろラーメン」などのヒット商品が生まれたり。
他にも魅力的な仕事をしている人を「ちくごに暮らす人々」のサイトでご紹介しております。
左:「九州ちくご元気計画」の研究会の様子。 右:「九州ちくご元気計画」から生まれた製品たち。
さらに福岡県や筑後地域の市町村、経済団体が連携して取り組んでいる九州ちくご元気計画では、地元のさまざまな人と地域のデザイナーや専門家がコラボし、プロダクトの価値向上とPR・販路開拓を行っています。その先鋭的な取り組みは、2011年のグッドデザイン賞を受賞しました。
このように、仕事環境としても魅力のある筑後で体験居住しながら働くというのは、地域を深く知るよい機会になるはずです。しかも今回は5つの市町がそれぞれ地域の特色を活かした面白い独自プログラムを用意してくれましたので、筑後に興味のある方は是非チェックしてみてください。
【クリエイター編】
隠れた魅力に溢れた「みやま市」に移住し、地域情報誌をつくる6カ月
田園風景が広がるみやま市はこのような景色に溢れています。
みやま市。名前も含め、正直極めてマイナーです。6年前に3つの町が合併して新しくつくった名前だということもありますが、そもそもPRが苦手であったことも否めません。
しかし、きちんとフォーカスしてみると、全国的に見ても面白い人や商品、環境があるということにぼくたちも気づきました。
例えば、日本に3件しかない国産の線香花火を製造、販売している筒井時正玩具花火製造所。
中国産の花火が市場を席巻する中、「守り続けてきた光を失うわけにはいかない」という想いを持って花火をつくり続け約70年。技術もさることながら、大切な人に贈りたくなるような洗練されたパッケージデザインは秀逸で、BEAMSやF.O.B COOPでも販売されるようになりました。
左:線香花火の色づけの作業。 右:筒井時正玩具花火製造所の線香花火。
次にこだわりのオーダーメードスーツ専門店KUROKI BESPOKE ROOM。
スーツの外商を営んでいた父親のお店を代替わりする際に、その外商を止め、オーダーメードスーツ専門店としてリニューアルした黒木さん。「もっと暮らしの中でスーツを楽しんでほしい」と、お店の内装やホームページ、サインなどをすべて一新。さらに、スーツだけではなく、地元の鉄工所やデザイナーとコラボレーションをし、シャツの袖を留めるカフリンクスを制作。一昨年のFUKUOKA DESIGN AWARD 2011に入賞し、昨年からは藤巻百貨店でも取り扱われるようになりました。
左:真剣な眼差しで生地を選ぶ、黒木さん。 右:ミシンの奥には田園風景。筑後らしい仕事環境です。
またその他にも、みやま市には日本で唯一昔ながらの製法で作っている天然樟脳の工場や、地元の高菜を使って高菜漬けをつくっている明治45年創業の老舗漬物屋など、こだわりを持って仕事をしている人たちがいます。
埋もれている魅力がみやま市にはまだまだたくさんある気がしています。
新緑と紅葉で有名なお寺「清水寺」で、プログラムを担当するみやま市企画財政課の長岡さんに伺いました。
左:滞在中の対応をしてくださる長岡さん。 右:清水寺の庭園、癒されます。
ーーみやまの魅力はどんなところでしょうか。
おいしい米や野菜などの食材と、こだわりを持った人情味のある人たちですかね。
樟脳の工場が閉まるという話が挙がると、地域の有志の方が存続のために立ち上がったり、みやま特産のセロリの新しい食べ方を提案する商品をつくる方がいたりと面白い方がたくさんいらっしゃいます。
ーーなぜクリエイターを募集するのですか。
生まれてこの方ずっとこの町に住んでいる私たちには気づかない魅力がまだまだあると思うんです。
そこで、外から来た方に、新しい視点でみやま市の魅力を発見、紹介していただきたいと考えました。
今回のちくご移住計画2013では、みやま市に移住し、暮らしや仕事を体験しながら6カ月間で地域情報誌をつくっていただくプログラムを企画しています。
それではプログラムの概要をご紹介します。
6カ月間みやま市の戸建住宅に住んで、地域情報誌を制作していただくというもの。
期間:2013年9月~2014年2月までの6カ月間
募集定員:1組(個人のほか家族またはグループでの参加も可)
報酬:60万円
賃料:月額500円(水道光熱費は自己負担)
応募締め切り:6月2日(日)
居住物件は、山の麓に建つ12畳の広い居間から緑を望める戸建。
やや古いですが、8DKととにかく広いので、ゆとりある田舎暮らしを体感できるはずです。
左:路地の先にある今回の居住物件。 右:12畳もある広い居間。とにかく広いです。
情報誌制作の方は、福岡の雑誌制作会社と共同で制作していくので、デザイン・コピーライティング・編集・撮影など持っているスキルを活かしてその一部を担っていただきます。
居住する期間は6カ月ですが仕事の時間配分などは比較的自由になります。制作に関する仕事時間以外は元々持っている仕事をしてもOK。
制作が早めに終わってしまえば、残りの時間を地元や近郊での仕事を開拓するのに使ってもいいし、ある程度県外の行き来も可能です。もちろんこの間に物件を探すこともできます。
筑後地域への移住を考えているクリエイターさんにとっては、移住生活の良い助走期間となるのではないでしょうか。注意点としては、車がないと何もできない環境なので、移動手段の確保が必須だということ。
福岡R不動産ではこれまでも移住のお手伝いをしてきましたが、都会にはない魅力を持った物件を見つけることももちろんのこと、移住先で仕事ができるのか、そして地域に気の合う人を見つけられるかというのが結構重要だったりすると感じていました。
6カ月という短くも長くもない期間を地域のことを深く知りながら過ごしてみることで、見えてくることも少なくないと思います。
筑後地域に移住したいクリエイターの方、お待ちしております。
より詳細な募集要項はこちらをご覧ください。
応募は「ちくご暮らし」より。
【フォトグラファー編】
空と田園の町「大刀洗」で暮らし、地域の魅力を撮影する2カ月
どうですか? この空と田園風景。
まず、読み方はタチアライ。由来は室町時代の有名な武将が刀を洗った川があることから来ているそうです。
平野に畑が広がる田舎町。電車は走っているけど線路は一本。車両も2両だけ。本数も30分に一本。でも、終電は24時(意外に遅くまであります)。今回居住できる物件に立つと、見渡す限り畑。まるで勾配がなく、ここまで平野が広がっていると爽快です。
そしてそれは、空が広いという魅力につながっています。
その昔、東洋一の飛行場と言われた大刀洗飛行場があったのも納得。離着陸時も視界良好でしょう。
左:線路は単線。 右:電車は2両だけ。
そんな大刀洗町ですが、他の多くの田舎町と同じくして、人口は減っています。以前は、町の人からは「何もない場所だよ。何しに来たの?」というネガティブなお話を聞くことが多かったようです。
しかし、町が活気づく新しい仕掛けも動いています。
例えば、「大正時代に建造された赤レンガ造りの今村天主堂」や「全国にファンを持つ三井の寿酒造」など大刀洗町に散らばる素敵なヒト・コト・モノを結ぶまちづくり団体「大刀洗ブランチ」。まちづくりを関係づくりと捉え、町のなかに埋もれた価値を見つけて新しい視点で関係をつくり、発信しています。
左:どこまでも続く麦畑。 右:地域コミュニティーの活動の場としても使われている居住物件。
そして次の展開として、町の魅力を改めて発掘し、写真を通して伝えていきたいと考えています。 そこで、フォトグラファーの方向けに、面白い企画を考えてみました。 題して、空と田園の町「大刀洗」で暮らし、地域の魅力を撮影する2カ月。
もちろんこの町に移住したいという方が来てくれたらうれしいのですが、この環境に興味を持っていただき、まちおこしに協力していただける方ならウェルカム。
2カ月間、大刀洗町に滞在し、空や農場や、あなたが見つけた大刀洗町・筑後地域の魅力をカメラにどんどん収めてください。
町や地域としてはそれらを広報誌やWEBで使って魅力を発信していきます。 また、筑後地域の魅力を発信する天神ソラリアプラザ「ゲンキケイカク365」でもあなたが切り取った大刀洗町・筑後地域の魅力を多くの人に見てもらいたいと思います。
決まっているのは写真60点程度を撮影・加工していただくこと、これらの写真を使って「ゲンキケイカク365」にて展示をしていただくこと、滞在期間に1度町民向けの写真教室をしていただくだけ。 それ以外の時間は何に使ってもかまいません。 大刀洗は筑後地域の中でも福岡市内へは近い方なので、割りと気軽に行けると思います。
左:青いトンガリ屋根の家が居住物件。この景色たまりません。 右:田舎のおばあちゃんの家という雰囲気の室内。
住んでいただく家は集落の端っこに佇む農家住宅。キッチンや風呂はかなりのレトロ加減だし、トイレは汲み取り式ですが、そこそこ味があり、なんといっても畑の真ん中に建っているかのような開放感は格別です。否が応にも生活はスローになるはず。現在は地域コミュニティーの活動の場としても使われていて、親切なオーナーさんが近所に住んでいることも心強い。一緒にご飯を食べたり、地域の活動に参加したりと、地域コミュニティーとの橋渡しとなってくれます。
こちらにプログラムの概要をまとめました。
期間:2013年8月1日~10月31日の期間のうち連続する2カ月間
報酬:70,000円
展示制作補助:上限150,000円
引越し費用補助:上限30,000円
賃料:月額500円(水道光熱費は自己負担)
応募締め切り:2013年6月2日(日)
より詳細な募集要項はこちらをご覧ください。
応募は「ちくご暮らし」より。
【木工職人編】
歴史ある木工のまち「大川」の建具職人に学び暮らす3カ月
4月にオープンした芸術文化交流施設「九州芸文館」。
いま筑後地域で最も風景が変わりつつある場所といえば、九州新幹線「筑後船小屋」駅ができた一帯でしょう。
新駅は、県内最大規模となる192ヘクタールの「筑後広域公園」の真ん中に位置し、広大な敷地には、温泉施設や直売所、体育館やグラウンドなどのスポーツ施設、屋外ステージ、バーベキュー場まで整備されています。
そして今年4月、筑後船小屋駅の目の前に、建築家・隈研吾氏が設計に関わった芸術文化交流施設「九州芸文館」がオープンしました。
(左)2年前に開通した九州新幹線「筑後船小屋」駅。(右)どこまでが敷地かわからないぐらい広々とした公園。
(左)広大な芝生の広場には野外ステージも。(右)多くの人で賑わう直売所「恋ぼたる」。
元々田園であった一帯に、「九州新幹線の駅」「広域公園」「温泉施設」「直売所」「芸術文化交流施設」などが次々に完成し、景色は一変しました。
そんな新たな顔を持つのが「筑後市」。筑後地域のほぼ中心に位置し、古くから薩摩街道の交通の要所として栄え、さまざまな文化が交わる地域でした。
もともと筑後地域は豊富な地域資源を背景としてさまざまな伝統工芸があり、画家の「青木 繁」や文学者の「北原白秋」、作曲家の「古賀政雄」など、数多くの日本を代表する芸術家を輩出する地域でもあります。九州芸文館はそんな筑後地域の芸術文化の新たな拠点となっていくでしょう。
そこで今回、九州芸文館オープンに合わせて、アーティスト・イン・レジデンス・プログラムを実施することになりました。
2カ月間筑後で暮らし、筑後地域の資源を活用した作品を制作、展示していただきます。
制作を通して地域の人たちと交流し、作品発表やワークショップという形でこの地域の新しい魅力を発信してください。
テーマとなる「地域資源」は、今回「久留米絣(くるめがすり)」にフォーカスしました。
完成品である反物をそのまま使うのはもちろん、材料(糸や染料)や工程、機材、デザイン等それにまつわるテーマであればOKです。久留米絣をテーマに他の材料と組み合わせるのもアリでしょう。
(左)機織り機を通る糸。(右)手織りでつくられる久留米絣。
ここで簡単に久留米絣の説明を、 久留米絣は江戸時代の後期に久留米在住の井上伝により創始された藍染の絣。あらかじめ木綿糸をくくり、藍と白に染め分け、その糸(絣糸)を用いて製織し、文様を表します。伊予絣、備後絣とともに日本三大絣の一つで、1957年に国の重要無形文化財に指定され、太宰治が好んで着ていたことでも有名です。最近は、伝統を守るだけではなく、吉田カバンやBEAMSとコラボレーションするなど新しい動きも生まれています。筑後市はこの久留米絣の中心的な生産地です。
続いて舞台となる展示スペースのご紹介。
展示場所となるエントランスホール。
展示・発表の場所は九州芸文館のエントランスホール。広さは約100平米、高さが最大9.8mの空間ですので、かなり大きな作品も展示可能です。
また、本館の入り口ということもあり、訪れたすべての人の目に触れる目立つ場所でもあります。建築家が創り出した空間を作品でアレンジしてみてください。
(左)居住物件は庭木に囲まれたレトロ戸建。(右)アトリエスペースと茶室の2階。
そして、アトリエ兼居住スペースとなるのは、別棟の茶室も備える約200平米の大きな日本家屋。九州芸文館からも徒歩15分、自転車なら5分程度。周りには田園風景が広がり、落ち着いた環境です。特に茶室の2階はのんびりした空気が流れ、創作意欲が掻き立てられるかも。アトリエスペースは、広さ43平米、高さ2.5mの箱。すぐ隣に風呂があり、水場へのアクセス良好です。
滞在中の生活面、地元住民や久留米絣の工房との橋渡しなどのサポートは筑後市の担当者が、制作面でのサポートは九州芸文館のスタッフがしてくれます。また、筑後市を拠点に、個性豊かな特色がある筑後地域を満喫するのも良いかと。
こちらにプログラムの概要をまとめました。
対象者:地域の新しい魅力を創り出すことに興味のあるアーティスト(ジャンルは不問)
募集定員:1組(個人、団体)
期間:2013年7月25日(木)~9月25日(水)(公演期間や展示期間を含む。)
引越し費用補助:上限3万円
作品制作費:上限30万円
滞在費補助:10万円(滞在期間分合計)
賃料:月額500円(水道光熱費込み)
審査員:
九州大学大学院 人文科学研究院教授 後小路 雅弘
九州芸文館館長 津留 誠一
池田絣工房 池田 光政
筑後市長 中村 征一
応募締め切り:2013年6月12日(水)
より詳細な募集要項はこちらをご覧ください。
応募は「ちくご暮らし」より。
【木工職人編】
歴史ある木工のまち「大川」の建具職人に学び暮らす3カ月
舞台となる前田建具製作所。
福岡の建築家やインテリアデザイナーが家具や建具制作の打ち合わせで大川に通っているのをご存知でしょうか。
家具生産高日本一を誇る大川市には、高い木工技術を持った多くの職人が活躍しており、繊細なデザインの木製家具や木製建具の制作には欠かせない存在となっています。
とある建築家によると、家具と建具の制作を一緒に依頼できるため、材料やデザインを統一できるのが大川の強み。繊細な技術が残っていることに加え、最近は漠然としたアイデアから具体的な形を一緒につくってくれる柔軟性のある職人が重宝されているとのこと。
左:町のいたる所に木工工房や家具屋さんが。 右:町中に材木がどんと置いてあります。木工の町ならでは。
町を訪れると、たくさんの制作工場や販売店舗が建ち並び、家具の町であることが一目瞭然です。 様々な商品ラインナップを展開し、業績を拡大する企業もある一方で、淘汰される企業・商店がたくさんあるのも事実。全盛期には800軒以上あった木工の工房も、現在は減少傾向とのこと。
そんな中、いま大川で最も成長している家具企画販売会社「関家具」の関社長に伺いました。
敷地内にある雰囲気のあるカフェの中庭。
ーー大川が家具産業の一大拠点になっている強みは何でしょうか。
大川には職人、技術、工場など家具の知識が集積しています。
商品開発時には多くのスペシャリストと議論しながらアイデアを形にしていけることが強みです。
日本中どこに頼んでもできないことでも、大川の企業や職人・工場の知識を集結すればできると思います。
ファッションは東京や天神がメジャーですが、家具は大川でしょう。
販売拠点としても九州中からのアクセスは良好ですし、佐賀空港からも車で15分、十分集客力があり、関家具では家具のテーマパークをつくるというコンセプトを持っています。
ーー大川でも工場が少なくなっていく中で、関家具さんはどのように業績を伸ばしていらっしゃるのでしょうか。
時流に乗ること、そして、社員に任せることです。
住宅家具からオフィス家具・医療家具・ガーデン家具などまで含めると国内で3.6兆円のマーケットがありますし、家具の需要がなくなることはまずありません。
その中で、顧客のニーズに合う商品を常に企画・開発しています。
例えば、住宅を新築して家具を揃える場合に、設計時から家具のデザインを検討する時代になっていますので、建築家とのネットワークを築いたり、建築家に選ばれるデザインの商品開発を行っているのです。
また、現在オリジナルブランドだけで8つ以上ありますが、これらはすべて社内の企画アイデアから生まれています。
企画チームには、打率は3割あれば良いと日々言っています。失敗は社長が責任を取るので、どんどんやろうというスタイルです。
ーー関家具で働いている方は地元の方が多いのでしょうか。
いえ、全国から集まっています。
東京で同じ業界の上場企業で働いていた人が、弊社に転職し、大川に移住したケースも10人ほどあります。来月から来る家具の試作を行うモデラーも東京からです。
大川には仕事はありますので、是非多くの方に来てほしいと思います。
と、インタビューさせていただいたのですが、大川にある関家具本社とそこに至るまでの風景とのギャップにはシビレました。 福岡から東脊振IC経由で訪れると、平野の広がる田園風景を眺めながら大川の町に入っていきます。
町には閉鎖してしまった家具店の建物や工場なども残っており、衰退の影も見えるのですが、関家具デザインミュージアムがある一帯には、ブランドごとに建物が建ち並び、お店とカフェと工房が入り交じった素敵な空気が流れていました。
最近新築された本社屋を訪れると、ワンフロアに100人ぐらいもの人が元気に働いており、この町にこんな企業があったのか、と感動すら覚えるほど。
少々大げさですが、シリコンバレーならぬファニチャーバレーとして大川が再興する日も来るかもしれません。
左:オリジナルブランド「CRASH」の店内。 右:敷地内にはそれぞれのブランドのお店が。
その他にも、町の活気を取り戻すために、今までの垣根を越えた新たな活動も始まっています。
「食卓」をテーマに大川の木工職人と、あまおうや日本酒などの食の生産者とのコラボ商品を開発している「大川コンセルヴ」。ここから生まれた商品の1つが「幸せをはこぶファーストスプーン」。ファーストスプーンとは、生まれた子どもにスプーンを贈ると食べ物に困らず幸せになれるというヨーロッパの習慣です。このファーストスプーンを木で制作し、そのデザイン性の高さで昨年のグッドデザイン賞を受賞しています。
また、細分化されていた木工産業(家具・建具・材木・合板など)のジャンルを超えてのコラボレーションの機会を提供する「大川維新の会」というのもあります。木工という同じ分野にもかかわらず、関係性が薄かったそれぞれの業界を結び、その活動の集大成として毎年、太宰府にある九州国立博物館で「大川匠の世界コレクション」を開催しています。
そして今回、大川が持つ木工技術が積極的に活かされ継承されていくことを目的に、研修型の体験居住プログラムを企画しました。
3カ月間大川に住み、建具制作を行う木工職人のもとで働き、暮らすというものです。
左:居住物件は歴史を感じる白壁の邸宅。 右:大川のシンボル「昇開橋」。
居住物件は、明治初期に建築され、かつては醤油問屋だった白壁造りの古民家。
筑後川を挟んで対岸は佐賀県という県境に位置しています。
目の前には国の重要文化財である昇開橋がそびえ、徒歩5分で昇開橋温泉というのも魅力の一つ。
最近移転して、広くなった工場。
研修先は物件から徒歩10分の前田建具製作所。
大川維新の会のメンバーでもある2代目の前田英治さんが率いる職人集団。個人としても、全国建具展示会国土交通大臣賞などを受賞しています。
その技術力に加え、ご自身も建築士の免許を持つなど、建築家に頼られる存在。
木工の経験がある方もない方も、ものづくりや建築に興味があればOK。
3カ月という短い期間では技術をものにするところまではたどり着かないでしょうが、そのまま職人の道を極めるもよし、その知識や経験を建築設計や施工など、関連する分野で活かすというのも面白いかもしれません。
プログラムの概要をまとめました。
期間:
第1期 2013年8月~2013年11月(居住12週、研修10週程度)
第2期 2013年11月~2014年2月(居住13週、研修11週程度)
募集定員:各期1人(個人のほか家族の同伴可。)
報酬:15万円(ブログでの情報発信の委託料として)
賃料:1,500円/滞在期間合計(水道光熱費は自己負担)
応募締め切り:6月2日(日)
前田建具製作所の前田さんに伺いました。
左:事務所でのインタビュー(右が前田さん)。 中:前田さんが施工した専門学校のライブラリー。 右:前田さんが制作した大川組子の天井。 (中・右 撮影:Bunsei Matsuura)
ーー前田建具製作所ではどのような仕事をされているのでしょうか。
住宅の扉や障子などの建具を制作しています。一般的な家具は作りませんが、備え付けの家具を制作することもあります。量産ではなく、建築家からの注文でその建物に合わせた特注品を制作し、取り付けまで行っています。建築家の漠然としたイメージを現実の空間に落とし込んでいくことが仕事です。そのため、同じ作業を繰り返すというより、毎回新しいことを試行錯誤しながら、制作しています。
ーーこれから木工を学ぶ方にアドバイスをお願いします。
木工のすべての作業を一通りできるようになるには、3年間は必要です。1人前の職人になるにはさらに7年、合計で10年間はかかります。今回のプログラムでは、まず自分が木工に向いているのかを見極める期間として考えてほしいです。研修後、この世界でやっていきたいと思ったら、相談に乗るので、気軽に応募してほしいですね。
より詳細な募集要項はこちらをご覧ください。
応募は「ちくご暮らし」より。
【果樹農家編】
九州有数の果樹生産地「うきは市」で、果樹栽培を学び暮らす6カ月
ぶどう畑での袋かけの作業。
うきは市は筑後地域の中でもいま最も移住希望者が多いエリアの一つです。
北には筑後平野が広がり、南には雄大な耳納連山がそびえています。耳納連山から町を見晴らすと、少し霧がかった視界の向こうに平野がどこまでも広がり、本当に気持ちがいい。
左:白壁の町並みには様々なお店が建ち並んでます。右:少し高台に登ると広大な筑後平野が見渡せます。
自然環境を活かして、昔からぶどうや柿などの果樹の栽培が盛んである一方で、伝統的建造物群保全地区に指定された白壁の町並みにはカフェ、パン屋、ギャラリーなどが建ち並び、歴史と文化を感じさせる魅力も備えています。
そんなうきはの魅力に惹かれて、ここ数年、県内外から移住してくる人が増えています。
大沢さんが運営する「山麓屋ポカラカ食堂」。
例えば2年前に東京から移住してきた大沢さんは、白壁の町並みがある豊後街道沿いの古民家で、玄米菜食のレストラン山麓屋ポカラカ食堂を運営しています。大沢さんの移住をきっかけに友人・知人もうきはに移住し、今では、移住したいという人が相談しに訪ねてくるそうです。
また、1年前に半反の畑を借りることに成功し、米や野菜を育て、今年中にさらに1反に広げる予定で、農業の比重を徐々に増やすとのこと。
半農半Xという言葉がありますが、移住者の中には大沢さんのように農業と何かを一緒にやりながら暮らす人も少なくありません。最近移住してきた方では、雑貨屋と野菜農家、陶芸家とブドウ農家、玄米コーヒー屋と玄米農家など。
農業とそれ以外の仕事の配分は人によって、時期によってもマチマチです。 たしかに、自分のスキルを活かした仕事をしつつ、農業をやって食べていくというのは合理的。 田舎ではいくつかの収入源を持って暮らすというのは自然なことなのかもしれません。
一方で、専業農業として新しい農法や経営方法を研究しながら農業をする方も多くいます。
今回の農業研修の受け入れ先の一つであるファゼンダかじわらの梶原さんもその一人。
梶原さん
「元々は会社員をしていましたが、大学時代に研究していた果樹栽培をしたいと、会社を辞めて5年ほど山梨で修行しました。独立は地元福岡でしたいと思い、県内さまざまな場所を探した中で、うきは市の担当者さんが一番親身に相談にのってくださったので、うきはに移住し農業を始めました」
「今は、桃とぶどう、柿、すももを栽培しています。EM農法という微生物の働きによって化学肥料にたよらず土の力で農産物を育てる方法で果樹を育てています」
「今後は、収穫した果樹を使ってジェラードを製造・販売するなど農業の6次産業化もしていきたいですし、農家を増やすために自分のもとから少なくとも2組の新しい農家を育てたいですね。実は来週から大学を卒業したばかりの若者が農業を勉強したいと、働くことになってるんです」(取材日2013年3月)
左:ぶどうの木の手入れをする梶原さん。 右:ゆむたファームの養鶏場。
また、ゆむたファームの高木さんは、自分で育てた野菜を飼料にして養鶏をしています。
高木さん
「以前は横浜の生協で働いていましたが、田舎で暮らしたいと思い、生計を立てるために農業を選びました。愛媛で研修を受けて出身地であったうきはで養鶏と野菜作りを始めました」
「最近は作物が異なる2組の親しい農家と手作りの雑貨や器のショップ、ジャム工房とコラボして『うきは山の手便』という共同販売の仕組みを独自につくりました。配達して販売しています。週に1度は春日市まで配達に行きます」
「農家を目指す方が増えているのは嬉しいことですが、市外の方が畑を買って、1年目は来るけど翌年からは放棄なんていう例も多いので、農業が自分に合うのかどうか研修などで体感してみるのもいいかもしれません」
このように、自然環境に恵まれたうきは市ではさまざまなスタイルで農業に取り組んでいる方がいます。そして、うきは市としてはより多くの方にここで農業を始めていただきたく、さまざまな支援をしています。
そこで今回は、これからうきはに移住して農業を始めたい方向けに、6カ月間の住宅付き農業研修プログラムを企画しました。
プログラムの概要がこちら。
期間:2013年7月中旬 ~2014年2月中旬の期間の内3~7カ月間
募集定員:若干名(個人のほか家族の同伴可)
研修費:無料
賃料:月額500円(水道光熱費は自己負担)
応募締め切り:6月2日(日)
研修の受け入れ先は3つ。
うきはで新規就農をしたファゼンダかじわらの梶原さん
農業の6次産業化をしているやまんどんの末次さん
福岡県認定農業者組織等連絡協議会会長をされているトマト農家の佐々木さん
それぞれの作物や時期についてはこちらを参考にしてください。
期間は最長7カ月ですが、希望によってはそれよりも短い期間にすることもできます。 基本的に週6日は農業研修。報酬は出ませんが、うきはの豊かな自然環境の中で農業を学びたい方にはとても有意義な時間になるはずです。
それと、定期的に農業研修の日々やうきはでの暮らしをブログで発信していただきます。 うきはは来る人を虜にしてしまう魅力があるので、農作業以外の時間もぜひ楽しんでください。
さらに研修終了後は、研修の延長や新規就農するための土地探しなど、うきは市としても積極的にバックアップしてくれるそうです。
より詳細な募集要項はこちらをご覧ください。
応募は「ちくご暮らし」より。