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2010.1.5

 
幕末築の醸造家屋を野菜直売所に
 

今から一年半前、オーナーさんから福岡R不動産に届いた一通のメールからこのプロジェクトは始まった。

「海軍御用達・宮内省献納・昭和天皇にご賞味いただいた醸造業家屋(建坪約250~300坪)を活用していただける方を探しています。敷地は約450坪ほどで、最古家屋(幕末から明治初年築)には坪庭があります。」

日頃どんなに古い物件を見ていても、さすがに「幕末」という単語にはご縁がない。ば、幕末?と、歴史の授業で習った懐かしく好奇心そそられるこのキーワードに呼び寄せられるように、すぐに物件のある前原市川付へと向かった。

築100年を軽く超えていることからもボロボロな姿を想像していたが、実際に目で見た建物は想像よりもはるかにきれいに保たれ、広大な敷地上に複雑に構成された存在感に圧倒されてしまった。

時を感じる土間空間。

醤油の製造・販売を行っていた建物に、当時のモノがそのまま残っている。

レジスターも時が止まったかのように佇んでいた。

約300坪の建物は大きすぎて写真に納まらない。

何度かの増築を重ねて今の姿になっているので、正確にいえば「一部幕末頃築」となる。

その歴史を物語る柱に刻まれた刀傷や、昭和初期に増築された母屋の建材、長らく醤油の製造で使われていた釜と、ディテールに関して語るだけでも長文になってしまいそうだ。

ともあれこのボリュームある建物を活用できる方を探そうと動き始めたのだった。

以前からR不動産をご覧いただいている方はご存知かもしれないが、「幕末タイムスリップ」というタイトルで掲載した物件である。溢れんばかりの魅力があるとはいえ、田舎にあっては大きすぎることもあり、難航するかとも思われたが、最初に物件をご案内したマキハウスの眞木さんが古い建物を「遺す」ことに共感してくださり、すぐにプロジェクトが立ち上がっていった。

「家づくりに携わる者として、この建物こそ遺すべきだ。できれば博物館・保護財としてではなく地域が活用できる建物としてにぎわいを取り戻すべきだと直感しました。」

歴史ある建物を改装により生き返らせるだけでなく、その建物が地域の人たちの集まる場として新たな役目を持つようにしたい。そんな意識で、復元・改修に取り掛かり、1年以上の時間をかけて完成した姿がこちら。

庭に向けて開放的なサロンスペース。

ガラスは進化した。そう感じる古さと新しさの融合。

入り口には当時の看板を再び掲げた。

「古い佇まいを大切にしたうえで、かつ、現代にあって良質のサロンとして、語らいの場、社交の場となることができるような斬新なデザインも導入しました。上質の空間が、都市と農村をむすびなおし、失われつつある農と食とそして家の意味をむすびなおす。特に、農の支援から地域を活性化し、地域の活性化から社会のあり方をリデザインしていきたい。文化施設としてこの新しい古建築を、社会に供したいと思います。」

そして、この建物は「伊都安蔵里」と名づけられ、糸島地域の野菜の直売所としてオープンした。地元の人だけではなく、福岡市内など遠方からもたくさんの人が訪れ、日々賑わっている。

地元の新鮮な野菜が並び、建物も活発さを取り戻した!

醸造釜からご飯釜へと用途を変えて復活。

また、人が集まり、文化を育む場としての役目を果たすため、定期的に各種教室を開催している。料理や角松作り、エコバック作り、ピラティス・・・と幅広い。

プロジェクトを担当している八尋さんによると、

「直売所のオープン前から地域の方々とこれからの活動について話し合ってきました。地元の協力もあり、農家からの仕入れルートもスムーズに確保できました。地域の方々とともに夜遅くまで語り合うことも多いです。今後は安蔵里を拠点として様々な活動が生まれていきそうです。」

と、想定以上に地域との関わりが深くなっているとのことだ。

この建物を通して、地域が元気を取り戻し、販路を持った地元農家も今まで以上に野菜作りをがんばる。そして、都心部からもここに人が集まってくる。地域の再生、活性化のヒントとしてもこのプロジェクトは非常に意義深いものである。もちろんまだまだプロジェクトは始まったばかりで、これからの安蔵里の活動が本番だが、個人的にも糸島エリアの一スポットとして通っていきたいと思っている。

前原・糸島方面に来られた際は是非安蔵里まで。

伊都安蔵里
福岡県前原市川付882
TEL:092-322-2222 
http://itoaguri.jp/

このブログについて
 

海も川も緑も、そして街も空港も、なんだってすぐそこにある福岡。東京から移住して、気づけばその魅力を満喫すべく、会社を立ち上げたり、倉庫のような物件を改装してオフィスにしたり、果てには芥屋の海沿いに土地を買ってしまったり。徐々に増えていく福岡R不動産のメンバーとともに、この街の魅力を再発見する日々を綴ります。
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著者紹介
 

本田雄一
長谷川繁
坂田賢治
松尾隆文

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