column 2016.10.7
 
Rトピックス

身近な島ぐらしの可能性 ~ローカルガイド壱岐編(1)~

坂田賢治(福岡R不動産/DMX)
 

こんなに福岡から近くてすぐ行けてしまうからこそ? 壱岐の心地良さをうっかり見落としていました。

壱岐の北側にある無人島「辰ノ島」。あまりの透明度にテンションが上がる大人たち。

島と聞くと、どこか遠い場所というイメージがあると思いますが、全国には島が約7000もあり、その中には気軽に行ける島もあります。今回紹介するのもそんな島の1つ。

物理的に近いけど、心理的に遠くなっていた壱岐

博多港からジェットホイル(高速船)で約1時間と意外と身近な存在の島「壱岐」。

福岡の人に話を聞くと「学生時代に行ったことがあるけど、それ以来行ってない」という声をよく聞きます。当の僕もそのうちの1人。まさに、物理的な近さとは反対に心理的にかなり遠くなってしまっていたというのが壱岐に対するホントのところ。

ここ1年、壱岐の話をよく聞くようになった

そんな壱岐ですが、ここ1年、facebookによく出てくるので気になっていました。しかも、投稿しているのが福岡の人だけでなく、移住者や東京在住の人たちまでも。たくさんある島の中でも、なぜ彼らは壱岐に惹かれているのか。そこには、どうもリゾート感覚で見る南の島などとはまた違う何かがあるようです。

その魅力を探るため、僕も約10年振りに壱岐に行ってきました。通いはじめて数ヶ月、今ではなんでもっと早く壱岐を訪れなかったんだろうと、この空白の10年を悔やむ気持ちでいっぱいに。だんだん、みんなが惹かれる理由がわかった気がします。

壱岐を語り始めると、いくらでも書けそうなのですが、まずは基本情報をおさらいしながら、魅力を伝えしていきます。

九州一の繁華街「福岡」からの近さ

博多港から壱岐まではジェットホイル(高速船)で約1時間。

まず紹介したいのが、九州一の繁華街「福岡」からジェットホイルで約1時間という距離。
島を訪れようとする人にとってこの近さは本当に魅力的なのですが、それは同様に壱岐に住んでいる人たちにとっても重要な要素となっています。

壱岐の人たちに話を聞くと、福岡は小さいころからよく通っているホームタウンのようなもの。買い物や飲み会、コンサートなどのイベントなど頻繁に船で福岡に渡っているそうです。日常では島の豊かな自然を満喫しつつ、たまに福岡に渡って都市ならではの娯楽を満喫する、そんな生活を手軽にできるのが壱岐の魅力の1つと言えるでしょう。

美しい海を中心とした自然環境

驚くほど真っ白な砂浜が広がる筒城浜。夏には海水浴で賑わいます。

続いて語らずにはいられないのが豊かな自然。島なので海がきれいなのは当然と思われるかもしれませんが、その透明度は想像以上。さらに壱岐の特徴としては、白い砂浜。壱岐のビーチは何かが違うなと不思議に思っていたその答えがこの砂浜。砂が違うとこうも印象が違うんですね。

福岡にいると、糸島など比較的海がきれいな場所がすぐ近くにあるので、わざわざ船で島に渡らなくてもと思ってしまうのですが、この海と砂浜を見てしまえばその考えは変わるかもしれません。

海だけではなく、こんな絶景をのぞむトレッキングコースも。

こんな環境が日常にある壱岐の人たちは、海で遊ぶことも生活の一部という人も多いです。例えば、病院に勤めている技師さんが、毎日のようにシーカヤックで沖に出て釣りをしてから出勤し、飲食店を営んでいる大将が、昼と夜の営業の間にその日の海の様子に合わせて今日は素潜り、今日はサーフィン、今日は釣りと日々思い思いに海を楽しんでいます。

島で自給できるほどの豊かな食材

魚だけじゃない、豊富な食材が揃う壱岐の食卓。特に壱州豆腐の意外性とおいしさには驚きました。

そして壱岐の特徴として、様々な食材が島内で採れることも外せません。島というと魚介類のイメージが先行しますが、それ以外の食材も豊富なんです。

最近、知名度が上がってきている壱岐牛は当然として、鶏や卵、アスパラなどの野菜、米に麦といった穀物、さらに麦焼酎まで、島にあるスーパーや直売所に行くと様々な壱岐産の食材が並んでいます。ないのは豚ぐらいですかね? これなら、「晩御飯はすべて壱岐産のもので作れそう!」という豊富さ。

島のあちらこちらに田んぼや畑が。漁業だけではなく農業も盛んなんです。

忘れてならないのが、壱岐の人々

ここ数カ月、毎月のように壱岐に通っている中で僕の楽しみが壱岐の人たちと会うこと。仕事柄いろんな土地に行くのですが、「この土地好きだな~」と思うのは、やはり人との出会いが大きな要素を占めています。

今回も本当に多くの出会いがあった中から1つ紹介したい場所が、この4月にオープンした「みなとやゲストハウス」。

島の人と出会うきっかけにもなる、みなとやゲストハウス。

知らない土地に行ったときに、困るのが地元の人との出会いのきっかけ。今回は、壱岐市役所の方などに地元の人をご紹介していただいたので、そんなに困らなかったのですが、もしその出会いがなかったら、こんなにも壱岐のことを熱くは語れなかったかも知れません。

島内外の人のハブとなっているゲストハウス

そんな出会いのきっかけに丁度良いのがこのゲストハウス。
釣り人と海女のご夫婦がやっているというそもそもキャッチ―な場所ですが、まだオープンして半年というのに、早くも島外の旅行者と地元住民のハブ的な存在となっています。

僕も何度か泊まり、そのたびにオーナー夫婦や他の宿泊客と呑んでいると、気づいたら宿泊客よりも地元の人が多いことも。そこで聞く、住んでいるからこそ感じている壱岐の魅力。そこには島ならではのちょっとした苦労もありながらも、都会では体験できない豊かな暮らしが垣間見られます。

オーナーご夫婦(左写真)の人柄に、島の内外から人が集まってきます。自分たちでリノベーションした室内(右写真)。

それともう1つ伝えたいのが、オーナー夫婦の人柄とその暮らし方。毎朝のように釣りに出かけるご主人と、海女になるために壱岐に移住してきた奥様。ゲストハウスではあるのですが、2人の家に遊びに来ているかのような感覚に。何度か泊まるうちに自然と「ただいま」と言っている自分がいました。

忙しくゲストハウスを運営しながらも毎日のように海に出て、壱岐での暮らしを満喫している2人。そんな2人が採った魚や貝などの海の幸を夜いただけるのも魅力の1つです。

通えば通うほど好きになっていく壱岐

と、様々な魅力がある壱岐ですが、毎月のように島に通い、壱岐にある日常の暮らしに触れていく中で、壱岐のことがどんどん好きになっていく自分がいます。壱岐のよさは南国のリゾートみたいなわかりやすい非日常感ではなく、もっと日常的で身近な存在。噛みしめれば噛みしめるほどとでも言いますか、よりローカルでディープな部分にその魅力が隠されている気がしてなりません。

海に沈む夕日を眺められるのも島ならでは。

ちなみに僕が、なぜ毎月、壱岐に通っているかというと・・・。福岡市と福岡市から直行便が出ている5つの島(壱岐・対馬・上五島・下五島・屋久島)、6市町による広域連携事業(「Re島PROJECT」)に関わらせていただくことになったから。

具体的な中身はまだご紹介できませんが、それ以外にも新たなプロジェクトがいくつか動き出しそうな兆しもあり、これから面白いことが起こりそうな予感が漂っています。僕が通う中で出会った素敵な人や場所もこれからも紹介していきますので、お楽しみに。

続く:壱岐の暮らしを満喫する人たち ~ローカルガイド壱岐編(2)~

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