糸島リアル移住日記(5) 働いてるんだか、遊んでるんだか...糸島の仕事スタイル

text=松尾隆文(DMX/福岡R不動産)

これまでの糸島リアル移住日記
糸島リアル移住日記(1)糸島は25年前からアツかった
糸島リアル移住日記(2)土と緑と海、そして人
糸島リアル移住日記(3)小さなイベントづくしの日々
糸島リアル移住日記(4)移住の新しい風が吹いてきた


糸島での仕事は誘惑がいっぱい!?

糸島の借家から福岡市中央区の事務所へ車で通っていた1年間は、オンとオフのメリハリが明確でした。早朝、車に乗り込むと同時に仕事モードに。その日の段取りなどを考えつつ、50分後には事務所のワープロに向かっていました。

それが自宅を仕事場にしてから、少し困ったことに。天気の良い日など部屋にいるのがもったいなくて、ついふらふらと家族で出かけたり、知人の漁師さんが獲れたてのイカを持ってやってきたりすると、もう仕事が手につきません。

お昼前からつい飲んでしまい、後悔したことは数え切れず。環境が良すぎるとかえって支障が出るものです。今は、少しはコントロールできるようになりましたが。


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春、家のまわりは誘惑がいっぱい。庭に自生するタラノキ、今年はばたばたしていてタラノメを摘む時期を逃してしまいました。


満天の星空を眺めながら眠りにつき、波の音や野鳥の声で目覚める、なんてことが糸島ではフツーにできてしまう。

都市部からも人気の地元産の作物はもちろん、フキノトウ、ツクシ、タラノメなどの山菜も身近に。5月の連休の頃にはラズベリーが真っ赤な実をつけます。

ことさらスローライフを意識しなくても、自然に寄り添う暮らしができる。そんな場所が福岡都心から電車でわずか40分程度の距離にあるんです。引っ越さない手はありません。


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来冬の暖房のために薪をつくる。街にいた頃は思いもしなかった贅沢な時間。


福岡市内に月1万円の"とまり木"を用意した

25年前、ネット環境はまだありません。仕事で使うのはワープロが主流でした。ライターの間ではワープロ、ファクス、コピー機が三種の神器と呼ばれていて、実際これだけあれば十分仕事ができました。

原稿はファクスから、後にフロッピーディスク(若い人は見たことがないかも!)での納品へ移行。納品のためだけに糸島から福岡市内へ走ることも多く、この時ばかりは糸島は遠い!と思ったものです。

市内に中継点となるスペースがあったらいいな、と思っていた時、知人が面白い物件を紹介してくれました。


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中央区赤坂にある、その名も「赤坂荘」。玄関に共用の靴箱がある(実際は土足で上がっていましたが)古い木造アパートで、家賃1万円!


僕が借りたのは3畳一間の和室で、1畳分の作り付けのベッドと小さな流しがありました。トイレは共同、お風呂はなし。赤坂に家賃1万円のアパートがあること自体驚きでしたが、それがほとんど埋まっていることも不思議でした。人が住んでいるようには見えませんでしたから。

隠れ家のような雰囲気もあり、「とまり木」としては十分でした。午前と午後に間を置いて打合せがあるときなどに重宝しましたが、思ったほど使用頻度は少なく、結局1年で解約することに。今なら、Wi-Fiが使えるカフェなどを利用すれば目的以上のことができてしまいますね。

このアパート、今も現役です。古色蒼然とした風貌は変わっていません。今でも借りてみたい物件です。


デジタルとアナログのバランス

今年3月下旬、家にも光回線が開通しました。電話回線とモデムによるダイヤルアップ接続からISDN、ADSLへとネット環境は徐々に充実してきましたが、ADSLになってから12年が過ぎ、光は半ばあきらめていました。

1990年代後半からネットを使うようになって、仕事環境は大きく変わりました。力ずくのフットワークで取引先との距離を埋めていた時代から、今は自宅で福岡R不動産のオフィスにいるのと同じことができています。

同じことができるなら、少しでも良い環境、好きな場所に身を置きたいですね。糸島、いいですよ!


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糸島の自然を象徴する美しい海岸線と海。そして南部の山間の集落も味わい深い魅力があります


ようこそ! 糸島へ

先日、糸島人気はすごい、とあらためて感じる機会に遭遇しました。

3年前に福岡市内から転居した隣人のカメラマンが、先日、地元で写真展を開いたのですが、その会場となったのは空き家を利用した私設の保育所で、代表者は二丈に住む東京からの移住者。そして、会場で出会った女性は、昨年秋、加布里湾を望む高台に中古住宅を購入して引っ越してきたそうです。

静かな集落に何かが起こっているのを感じます。彼らがそれぞれの視点で糸島の魅力をとらえ、集落を超えてネットワークを広げていることに頼もしさを覚えました。

糸島に吹く風。それは"時代の雰囲気"がそうさせているのではないか、と思うことがあります。第1次、2次糸島ブームとは質の異なる、新しい第3次ブームが既に始まっていることを感じます。


*糸島日記は今回で最終回とさせていただきます。ご愛読いただきありがとうございました。糸島に寄せられる期待にお応えできるよう、これからもさまざまな切り口から魅力的な物件をご紹介できるよう努めてまいります。


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このコラムについて

海も川も緑も、そして街も空港も、なんだってすぐそこにある福岡。東京から移住して、気づけばその魅力を満喫すべく、会社を立ち上げたり、倉庫のような物件を改装してオフィスにしたり、果てには芥屋の海沿いに土地を買ってしまったり。徐々に増えていく福岡R不動産のメンバーとともに、この街の魅力を再発見する日々を綴ります。

著者紹介

本田雄一
長谷川繁
坂田賢治
松尾隆文

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